冷たい手でもいいよ
今の季節は冬だがサッカーをしていれば寒さなどあまり感じないし、し終わった後も暫くは体は温かい。それでもやはり冬だ。徐々にだが体は冷え初めてきた。
「寒いな」
隣を歩く風丸は白い息を零しながら言った。
「そうだなー」
「さっきまで気にならなかったのにな」
そう言って風丸は笑った。付き合ってかなり経つのに風丸の笑顔に俺はまだ慣れていない。
「半田、顔赤いぞ」
にやにやと言ってくる風丸は絶対に俺がまだ慣れていないことを分かっている。そんな風丸に赤い顔を見せたくなくてぷいっと顔を逸らした。
「どうしたんだよ」
「別に」
口元に手を持っていき、はぁと息をかける。そうしているとばっと風丸に手をとられた。
「なっ」
「半田の手、冷たいな」
ばっと風丸を見れば真剣な顔をしていてうまく言葉が出なくなってしまった。ぎゅっと風丸が俺の手を握る。指と指を絡めるやつ...所謂恋人繋ぎというやつだ。
「しょ、しょうがないだろ」
寒いんだから、と言えば風丸はまた笑って「繋いでれば寒くないだろ」といった。
「そうだけど、冷たい手嫌だろ」
「いや、逆にこういうこと出来るから好きだな」
と言って自分のコートのポケットの中に繋いだ手を入れた。
「...ベタな奴」
ぼそっと呟いた言葉が聞こえたのか聞こえなかったのか分からないが風丸はこっちをみて微笑んだ。その微笑みと繋いだ手から伝わる体温のせいか一瞬くらっとしたのは気のせいだと思いたい。