ため息まで白い
息を吐くと途端にそれは白くなる。もう直ぐ春だというのに寒い日ばかりだ。なのに幼なじみときたら飽きずにこの寒い中サッカーを遅くまでやっている。風邪をひいたりしないのだろうか。いや、なんとかは風邪を引かないと言うし大丈夫だろう。などと考えながらゆっくりと足を進める。
「風丸!」
突然後ろから声をかけられた。振り向かなくても誰かは分かるが振り向いて声の主をみる。追いつこうと走ってきたのだろう息がほんの少しきれていた。
「どうしたんだ、半田」
「別にどうしたって訳じゃないけど」
風丸が前にいたから、となんとも嬉しいことを言ってくれる。
「そういえば円堂は?」
ぴきっと一瞬で笑顔が引きつった。例え片思いでも好きな人から他の奴の名前がでてくるのは嫌なものだ。
「まだサッカーしてるよ」
「ふーん」
半田は超がつく鈍感だ。これでもかなり積極的にアタックしてるつもりであの恋沙汰には疎い鬼道でも気付いている。
「なあ、風丸のタイプってどんな子?」
いきなりなんなんだこの子は?話をとばした上に爆弾降下してきた。
「そうだなー活発な子がいいな」
びっくりはしたが冷静を装って答える。実際はかなり動揺している。まさか半田がタイプだなんて言えない。多分こういうところが俺の駄目な所だと思う。いつもならはっきりと言えるのだがどうも恋愛ごとは駄目なようだ。
「へー」
半田の反応は実にあっさりとしたものだった。暫くそのまま歩いていると十字路が見えてきた。半田は右で俺は左に曲がる。
「じゃあな風丸」
そういうと俺に追いつこうと走ってきたようにまた走りだした。
「ああ、また明日」
半田の後ろ姿を見送っているとため息が漏れた。白くもわっと広がると瞬く間に消えた。半田は俺の気持ちに気づいているんだろうか?そんなことを思いながら俺も半田と同じように家へと走り出した。