「あ、あれ…?」
息を殺して勢い良く窓を開け放ったわたしは、そこに見知った姿を見て、思わず声を上げてしまった。
「ヤナップじゃない!どうしたの?今はお昼じゃないよ?」
窓を叩いていたのは、毎日お昼頃になるとご飯を貰いにくるちゃっかり者のヤナップだった。
わたしの問いかけに、ヤナップは「違う!そうじゃない!」と言いたげにぶんぶんと首を振ると、わたしの袖をぐいぐいと引っ張る。どうやら外に出てほしいみたいだ。
「ちょっと待って!何か着てくるから!」
春とはいえ夜はまだ肌寒い。そんな中パジャマで外に出て風邪を引くのだけは勘弁したいわたしは、取りあえずカーディガンを着てベランダに出た。するとヤナップがベランダの隅の方でわたしを待っている。
不思議に思ってヤナップに近づこうとしたわたしは、その後ろに何かが横たわっているのを見た。
(何あれ…なんか大きい…)
正体を見極めようとするけれど、ちょうど建物の影になっていてよく見えない。
しょうがないのでまたなけなしの勇気を振り絞って近づくと、そこにいたのは―――
「……えっ………?」
―――ベランダに寄りかかって座り込んでいる、男の人だった。
それは事件の予感