近頃、怪盗が世間を騒がせているらしい。といっても、わたしは最近とんと外に出ることがなくなったから、詳しくは知らないのだけど。
怪盗が狙うのはどれも不当に売られているものばかり。しかも怪盗は盗む時にご丁寧にもその証拠を残していくらしく、過去に「そういうこと」をしたことがある会社や貴族は今大慌てなんだとか。

そんな中、話題の怪盗さんはどうやら今日も大活躍らしい。

(みんな物好きだなぁ)

ベッドから耳を澄ませれば、聞こえてくる警官の怒鳴り声と野次馬の歓声。「怪盗を捕まえろ!」という声と同時に「証拠と家主を押さえろ!」なんていう声も聞こえてくるのが、なんだか面白い。

(警察も、なんだかんだで怪盗を信用してるんだね)

思わずふふっと笑ってしまったわたしは、ふと何気なく時計を見た。…えっ、もう12時?

(またご近所さんに「夜更かしはお肌に悪いわよ!」なんて言われる…)

最近は外の怪盗騒ぎを聞くのが楽しくて遅くまで起きていたから、自分でも肌を気にしている。それだけに、指摘されるはちょっと辛い。あのおばさんやけに鋭いからなぁ…。
慌てていそいそとベッドに横になって、目をつむる。…と、たまたま耳が喧騒に混じったノック音を捉えた。

(なんだろう…窓の方から聴こえる…?)

こんこん、と鳴り続ける少し高めの音。…これは、どう考えても意図的に叩かれている音だ。
意識から外そうとどう頑張ってみてもその音が気になってしまって、わたしはとうとうゆっくりと体を起こした。
こうなったら、正体を暴いてやるんだから…!(ちょっと怖いけど)

そう心の中で奮起すると、わたしはなけなしの勇気を持って窓に向かった。勿論、片手にはフライパンという名の武器を装備して。


それが始まりのサイン




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