どうしてこうなった…!?
私は間近にあるアルヴィンの顔にフリーズしてゆく頭の片隅でそう思った。
事の発端は、街に着いて食事をしていた時のことだった。夕食時だからか食事処は凄く混んでいて、ただでさえ間が狭い店内がまともに歩けなくなっていた。そんな中、武器の調達に向かっていた私はみんなに先に食事処に行ってもらっていたから、一人でその凄まじい人混みに対抗しなければならなくて。
「…おぉう」
…私潰されんじゃね?
正直、死亡フラグが立ちまくってる気がしたんだけど、この人混みを突破しない限り夕飯にはありつけない。ていうかなんであんな奥の席取ったかなあの子達。いや混んでるししょうがなかったんだと思うけど。
「よ…よし…!」
そうガッツポーズで意気込んだ私を見て、向こうでアルヴィンが小さく笑った。悪いけどこの中飛び込むのけっこう勇気いるんだからね!?あんたは背高いし男だから平気なんだろうけど!ちくしょう羨ましいな!身長寄越せ馬鹿!
「す、すいませーん…!」
まぁそんなことを思ってもしょうがないからね!私頑張るよ!っていうかあれじゃね?私小さいからまともに突っ込むんじゃなくてすり抜けるイメージでいけばなんとかなるんじゃね?私は風になる!
「よ、っと…すみません通りまーす!」
そんなこんなで、格闘すること少し。思っていたよりもすんなり人混みを抜けていった私は、あともう一人で目的地に辿り着くところまできた。因みにラスボスはガタイの良い兄ちゃんである。
「よし…これで最後…!」
いける…!
そう確信しきっていた私は意気揚々と足を踏み出した。
しかし。
この時私は世の中に「油断大敵」という言葉があるのをすっかり忘れていたのだ。
「アンディー!!ちょっとごめんなさいねー!!」
「えっちょおおおおおお!?」
えっ何このハイテンションな女の人おおおおお!?
黄色い声を上げるお姉さんに背後からどんと突き飛ばされた私は勢い良く前に吹っ飛ばされた。
やばい前の兄ちゃんにぶつかる…!
「シンディイイイイ!!」
「えええええ!?」
嘘だろ前の兄ちゃんが連れかよ!?ていうか避けるなよクッションがいなっうわあああああ!
そんなこんなでパニックになった私は踏ん張ることも出来ずに前につんのめって…。
「なっ…!」
「うわっ!」
ぽすん、と。
何故かアルヴィンの膝の上に、跨るように座ってしまったのだった。
「……(どうしよう)」
なんとか打開策を考えようとするけれど、完全にフリーズしてしまった頭では何も考えられなくて。見ればアルヴィンもぽかんとした顔でこちらを見ていた。
「二人共―――」
ジュードが何やら言いかけた気がしたけれどそれはすぐにふがふがというくぐもった声に変わった。ちくしょうレイアだな余計なことしたの!
「……え、えと、ごめ」
「おやおや、彼女さんかい?大胆だねぇ」
な、なんですと!?
聞き捨てならない声が聞こえて振り向けば、そこには料理を両手で持った女将さんらしき人がにやにやと笑みを浮かべて立っていた。
「でもここは公共の場なんだ。あんまり独り身の奴らに見せつけないでやっとくれよ」
「ちちち違います!私は彼女なんかじゃっ…第一っ、これは事故なんです!事故!私と彼は断じてそんな関係じゃないですから!」
「はいはい、かわいいねぇ」
「だーかーらー!違いますってばああああ!!」
私の必死の叫びにも関わらず女将さんはあっはっはと笑いながら料理を置くと注文を取りにいってしまった。あっはっはじゃないよ人の話聞けーっ!!
えまーじぇんしー!
(顔が暑い…っそんなまさかね!ないない!)
(アルヴィン大丈夫?)
(…あ、あぁ……)
(心此処に在らず、だな)
(いやはや、若いですなぁ)
アルヴィンは膝に乗った夢主を可愛いと思ってしまったことに呆然としていたり