「姉さん!」と叫ぶジュードを無表情で見つめ、ナマエは冷たい口調で続けた。

「言った筈です。答えは否」
「姉さんだってわかるでしょ!?戦争が始まるんだ!それに、僕等がクルスニクの槍を止めれば被害は最小限になる!」
「…それでもあなたがたと行動を共にするつもりはありません」
「どうして!!」
「私の勤めだからです」

尚も食い下がるジュードに、ナマエは突き放したように続ける。

「もう良いでしょう。これ以上は話すだけ無駄です。私にも仕事がありますから、そこを退いて頂けますか」

問い掛けているようだが有無を言わせない威圧的な口調に、ジュードは悲痛な顔でナマエを見つめる。そんな弟を見て、ナマエは内心で溜息を吐くと動かない彼等の方に足を進める。

「…なんで…姉さん……」

すれ違い様に聞こえたジュードの弱々しい声に、ナマエは今度は隠すことなく溜息を吐いて立ち止まった。
小さく跳ねたジュードの肩に、内心では苦笑を浮かべる。

だいぶ年が離れているジュードのことは心から大切に思っている。転生する前の世界では一人っ子だったナマエは昔から兄弟に憧れていて、だからこそジュードが産まれた時は本当に嬉しかった。

ジュードはいつでも真っ直ぐだ。でも彼は優し過ぎるし、何より若過ぎる。そんな彼にはまだこの気持ちがわからないだろうしわかってもらおうとも思わない。
けれど。

「上に立つ者は、常に孤独なの。…私はあの人を置いていけない」

命の心配をしてくれているのはわかっている。でも、これが私の道だから。
そんな思いをこめた小さな呟きは、近くにいたミラやアルヴィン、ローエンにも聞こえたようで。

「行くぞ、ジュード」
「…でも、」
「嫌だって言ってるんだから諦めようぜ。俺達にはやることが山積みなんだ」

何かを悟ったパーティの成人メンバーが十代のメンバーを急かし、城を後にする。
ふと、ミラが足を止めてナマエの方を振り返った。

「何かしら、マクスウェル」
「…貴女は強いんだな」

ミラの言葉に、ナマエは笑みを浮かべる。それは自嘲とも呼べそうな笑みだった。

「…どうでしょうね」


姉、拒否する。

(世界も弟も大事だけれど)
(何よりも心配するのは彼のこと)


「あの人」は勿論ガイアスのことです



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