やっちまった。
私は惨状とも言える今の状況に、内心でそれはそれは大きな溜息を吐いた。腰に巻きつくのは無駄な筋肉の無い、けれどがっしりした男の腕。首元に埋められた顔のせいで髪の毛が当たってくすぐったい。

「ねぇアルヴィン、離れようよ」
「………」

返事が無い。ただの屍の――って、違う違う。…だめだ、私完全にパニクってる。

(返事が無い。ただの酔っぱらいのようだ。…だよね)

そう。私は今、アルヴィンと書いて酔っぱらいと読む奴に後ろから抱き締められていた。

(ベタというか、なんというか…)

私ってまさかベタの神様に好かれてるのかな…なんだかこっちの世界に来てからというもののアルヴィンと一緒にいてベタな展開にしか遭遇してない気がするし。ベタ過ぎてもう関心するわ。

取り敢えずなんでこうなったのか確認するために床に転がっていた酒瓶を足で転がし、ラベルを見ると……うわぁ。

(こんなの私でも一升飲めないって……)

いやこの度数はないでしょ。これ私でもつらいって。というか多分辛すぎて飲めない気がする。
アルヴィンも酒はある程度はいけた気はするけど、私よりは弱かった筈。そんな奴がどうしてこんな酒を飲んだのかがすっごく疑問なんだけど、飲んじゃった以上はどうしようもないか…めんどくさー。

(此処が宿の部屋で本当に良かった)

そう心から安堵しながら、私は酒瓶を蹴飛ばすとアルヴィンの腕から脱走を試みた…んだけど、この男、腕力が半端ない。

(ちっくしょーなんで外れないの!!あれか普段からデッカい剣振り回してるからか!?銃ぶっ放してるからか!?それともチャージ技なんて使ってるから!?)

うがー!と内心かなりキレつつ、私はやり過ぎない程度に足を踏んだり手を叩いたり腕をつねったりしてみたけど、アルヴィンには全く効いてないっぽい。なんだこの化け物は。酔って痛覚が鈍ってるのかそんな馬鹿な。男女の差が恨めしいわこの野郎。
…こうなったら。

「ごめん、アルヴィン!」

そうちゃんと聞こえるように言うと、私はアルヴィンの鳩尾に肘を叩き込んだ。ちゃ、ちゃんと言ってからやったからね!私悪くないよ!俺は悪くぬぇ!…おっといかんついネタが。
ぐっ、という呻き声と共にアルヴィンの体重が一気に私にかかる。…よし、これで抜けるはず!
アルヴィンが気絶したのを確認して、私は再び腕を外しにかかったんだけど。

(嘘、外れない!?何コイツどんだけ力あんのよ!!)

どんなに頑張ってもうんともすんとも外れない腕に、私は外すことを諦めて足を踏み出した。無理。疲れた。

ずりずりずり、と大の男を引きずり、向かうは部屋の隅にあるベッド。そこに背中から、つまりアルヴィンを下敷きにするように飛び込む。飛び込んだ瞬間後ろから呻き声がした気がしたけど、多分きっと気のせいだよね。アルヴィンは起きてないよね。

「……」
「(ってやっぱり起きてたー!!)」

飛び込んだ衝撃で起きたアルヴィンは酒が抜けきっていないのか、私を抱えたままもぞもぞと動く。あの、首に顔埋めないでほんとくすぐった………っ!?

「(耳舐められた……!)って、ちょ、どこ触ってんだ馬鹿っ!!」

待って待ってやばい服の中に手が入ってるやばいうわあああ止めろ本当やめてくれ!!!

そんなこんなでパニックに陥った結果思わずフリジットコフィンを発動してしまった私は何も悪くないと思うんだ。


酒は飲んでも呑まれるな!
(ていうか寧ろ正当防衛だしね!)
(酔っ払い、ダメ、絶対!)



お前も酒癖悪いだろっていう(笑)
アルヴィンがどうしてこんな状態になったのかももしかしたらアルヴィンは酔ったフリしてただけで本当はザルなのかも私にはわかりません←
アルヴィンのキャラがどんどん崩壊していく…(笑)




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