「あ、あずさあああ」

僕の彼女は、怖がりで泣き虫だ。
これは、付き合い始めた高校生の頃から大学生になって同居を始めた今まで、全く克服される気配がない。先輩の怖がりは筋金入りだ。

「今日はどうしたんですか、先輩?」
「学科の友達がホラゲの話してきて…!やめてって言ったんだよ?!なのに実況動画まで見させられて…!もうやだあああ壁に死体いいいい」

あぁ、サイ●ント・ヒルシリーズでも見たのかな。
帰宅するなり飛びついてきた先輩を抱き止め、よしよしと頭を撫でながら考える。あのシリーズはグロテスクな上にエグいって聞いたことがあったような…。

「大丈夫ですよ、そんなの現実には起きませんから」
「それはわかってるけど!もう嫌だよトラウマだよおおお」

そう半泣きでしがみついてくる先輩は、失礼だけど凄く可愛い。普段しっかりしていて「先輩」らしいのに、こういうところで不意に僕より子供に見えるのが、もうなんともいえない。
ソファに座り、先輩を向かい合わせの形で足の上に座らせる。僕の服の胸元をぎゅっと掴む手を外すと、頬を優しく撫でた。
先輩と目を合わせると、その目はゆらゆらと不安そうに揺れていて、しかも口はぎゅっと引き結ばれている。うん、やっぱり可愛い。

「大丈夫ですって。僕がついてます」

優しく抱き締めるとぎゅうう、と抱き締め返される。まるで全身で僕の存在を確かめるかのように。いつもより密着しようとしてるのがわかるから、この例えはあながち間違ってるわけでもないと思う。

「先輩、今日は取り敢えずやることないですか?」
「…うん、ないよ」
「じゃあ、僕も無いんで今日はさっさと寝ちゃいましょう」

僕の言葉に抱きついたまま小さく頷いた先輩。本当に今の先輩は僕より年下に見える。そんな先輩が可愛かったから腕を解きつつ耳元にキスをすると、先輩の肩がこれまた可愛く跳ねた。

「お風呂、一人で入れます?一緒に入りましょうか?」
「………がんばる…」

よっぽど怖かったのか、普段なら「大丈夫だよ何言ってるの?!」と顔を赤くして怒られるような言葉にもこの反応。っていうか先輩、「頑張る」っていうことは、無理だったら入っても良いってことですか…?!

冗談でも言うんじゃなかった。これで一緒に入ろうとか言われたら僕の理性が持たない。

「頑張って下さい。無理なら扉の前にいますから」

かと言って「冗談ですよ」と言えば先輩がショックを受けるのがわかってるので(怖がりな先輩はきっと前半の言葉に返事しただけだから)、さりげなくこう言う。

僕の言葉に安心したのか、先輩は相変わらず涙目だけれど大人しくお風呂に向かった。

この後、先輩に抱きつかれたまま寝ることになって本格的に理性と戦わなきゃいけなくなるとは、この時の僕は思いもしなかった。




梓を困らせたかっただけです。反省はしている。だが後悔はしていない。私頭湧いてる。サイ●ント・ヒルじゃなかったらごめんなさい>壁に死体
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