ちょっと、どういうことよ。

私は教壇に立つ三人の男子を見て冷や汗が止まらなくなった。

私は元々とある由緒正しいマフィアのボスの娘…つまり跡継ぎだった。けれどある日、敵対していたマフィアに奇襲されてうちのファミリーはほぼ全壊。両親を殺された私は生き残ったファミリーと共にイタリアを離れて再興の機を伺いつつ追っ手から逃げていたわけだけれど。
そんな私でも、目の前にいる三人の男が何者か位は知っている。

(なんでボンゴレがいるの…!?)

それも、十代目とその幹部が、二人も!
そんな私の思いとは裏腹に、彼等は自己紹介を済ませて席に着く。

ボンゴレファミリーは伝統も格式もあるファミリーで、うちのファミリーとは昔から友好的な関係を続けていた。うちのファミリーが壊滅した時には必死にファミリーの生き残りを探しつつ、敵ファミリーをボッコボコにしてくれたらしいけど、今彼らに見つかるのは御免だった。助けてくれるのが例え好意からであったとしても、なるべく借りは作りたくないのだ。

お願いだから、私のことに気づかないで。というか、私のことを知らないでいて。くわばらくわばら、とそんなことを思っていた私だったけれど、ああ、カミサマは非情だ。
だってほら、休み時間の鐘が鳴った途端に十代目がこっちに近寄ってくる。

「あの、ナマエさん、だよね?」
「は、はい。これからよろしくね。…で、私に何の用事が…?」

にこりと笑い掛けられて、周囲からは女子の黄色い声があがるけれど、当の私はひきつった笑顔を返すので精一杯だ。

「ごめん、そんなに怖がらないで。…俺はただ、確認がしたかっただけなんだ」

そんなこと言われましても。
内心逃げたくてしょうがないんですよ、こっちは。ボンゴレに関わりたくないんです。
そう言いたくても、相手は友好関係にあったとはいえ天下のボンゴレ。口が裂けてもそんなこと言えない。言えるわけがない。

「か、確認…?」

私の言葉に、十代目は「うん」と頷くと笑顔のまま私に問いかけた。

「君は、クラントファミリーの次期ボスのナマエちゃん、だよね?」

やっぱりわかってたのか。
そう思った次の瞬間には、私はもう椅子から勢い良く立ち上がり教室のドアに向かって駆け出していた。
まだマフィアに、ボンゴレに関わってはいけない。逃げなきゃ。ひたすらそう思って足を出したけれど、ぱし、と腕を掴まれて失敗に終わる。

「話を聞いて」

体を引っ張られ、不意に耳元で囁かれた言葉に顔の熱があがった。
大きくなった黄色い声も他の音は何も聞こえなくなり、馬鹿になってしまったのか私の耳は十代目の声だけを拾う。

「俺は、君を助けに来たんだ。…君を守りたいんだよ」

彼の声音は心の底から私の身を安じているようで、さらに顔の熱があがる。
どうして。なんで。わけがわからなくなった私は勢い良く十代目の手を振り払うと、教室の外へと飛び出した。

(なんで…会ったこともなかったのに、あんなこと…?)

宛てもなく走りながら、混乱しきった私の脳内では彼の言葉がずっと周り続けていた。



どこの少女漫画だよ(笑)。
もしかしたら中編にするかも。




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