「、っふ…っじゅぞ、さ…っ」

角度を変える合間に必死で名前を呼ぶ。けれど柔造さんは気づいていないのかそれとも敢えて無視しているのか(多分後者だ)、逃げようと引いていた私の腰をぐっと引き寄せた。より深くなった口づけに、私は最早何も抵抗出来ずされるがまま。相変わらず柔造さんはキスがうまい。ていうかこの人本当に僧侶になるのかよありえないよいいのかこんなんで。

「…は…っ…」
「相変わらずかいらしなぁ」

潤んでしまった目を隠そうと胸に顔を寄せれば、そんなのお見通しとばかりに顎を持ち上げられる。首元に触れそうで触れない唇がくすぐったくもどかしくて、私は思わず柔造さんの制服をぎゅっと掴んだ。

「…金造がこの様子見たらびびるやろなぁ」
「…姉様が見たら柔造さん殺されますよ」

私の言葉に柔造さんは「せやなぁ」と笑うと、私の首元に噛みつくように口づけた。小さな痛みに肩が跳ね、私は柔造さんにしがみつく。先程のキスで完全に力が抜けていた私は今、壁と柔造さんに支えられてなんとか立っていられている状態だ。…ほんと、こんな状態を姉様に見られたらどうなるか、考えただけで恐ろしい。

私は一応、宝生家の人間だ。物心つく頃にはもう既に宝生に姓が変わっていたけれど、私は元々宝生家の遠縁の家の娘で、両親の早死にが養子縁組の原因だった。

宝生家と志摩の仲の悪さは有名すぎるほど有名で、私と柔造さんもそれは重々承知している。だから私達は隠れて付き合っているし、里帰りしている間は滅多に口をきかない上に喧嘩する“フリ”もする。学園内でも姉様がいない時、いない場所でしかこういうことはしない。さながらロミオとジュリエットだ。だから私達は堂々と恋人らしいことは出来ないけれど、私はそれでも構わないと思っている。
時々、耐えきれなくて里帰り中でもこっそり会うことがある。そうして今のようにキスをしたりする時、私は言いようのないどきどきを感じるのだ。例えるなら、母親に内緒で悪戯をしているような気分。それがたまらなく心地良い。危険と隣合わせというスリルが、私を、そして柔造さんをより深く繋ぐ。
そして、私達は今日も互いの愛に溺れてゆくのだ。

bitter sweet
Title by Maaya Sakamoto




(もしかしたら続くかも)
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