ナマエはんは俺の祓魔塾時代の先輩やった。今は竜騎士と手騎士の資格を持つ上一級祓魔師で、例えるなら、外国の神話に出てくるというヴァルキリーのような人やった。
ナマエはんの戦い方には無駄ちゅうもんが一切無い。いつも最小限の動きで、最小限の弾の消費で片をつける。時々ストレス発散でマシンガンを敵に乱射しとるのを見かけるけど、それも敵が複数体いる時にやっとるからまぁわかる。現に今かてそうや。上級の屍複数相手にバンバン撃ち込んでらっしゃる。しかもそらもう楽しそうな顔で。…ナマエはん最近ストレスでも溜まってるんやないか?

「せ、先輩怒ってます?」
「え?いや別に?これ位で怒る程私器小さくないよ?」

むっちゃ怒ってるではおまへんどすか!!
そうツッコミたくなったけど我慢する。やって、俺まだ体中に穴開けとうないし。

先輩は昔から男前…とまではいかんけど度胸があった。ほんでかいらしい外見に似合わず意外と口より手足が先に出る。しかもよく人を巻き込み振り回す人やった。特に俺はその一番の被害者やと思う。
けど、惚れた弱みなのか、俺は昔からナマエはんの無茶ぶりを断れんかった。ほら、惚れた女には頼られたいのが男の性どすし。ちゅうか正直、他の男が頼られてナマエはんと仲よおなってまう位やったらどんな無茶ぶりでも耐えられる自信あるわ。
まぁ、そないなことを幾らこっちが思っとったって、どうせナマエはんは俺のことを弟か舎弟みたいにしか考えておらんのやろうけど。なんや自分で言うてて悲しくなってきた。

「これで、終わり!」

屍達をほぼ一人で片付けてしもたナマエはん(惚れた女を守れへんとか悲しすぎるわ…)は、爽やかな笑顔でこっちを向いた。…なんというか、よっぽど何や溜まっとったんどすね先輩。
銃をホルスターにしまうナマエはんに近づいて確認すれば怪我一つしておらんようで安心した。

「それにしても先輩、なんであんなに怒っとったんどすか?」
「そんな怒ってないんだけどな…。だってさ、せっかく久しぶりに後輩と二人っきりで話せると思ってたのにさー」
「…えっ」
「……あっ」

ナマエはんは「しもた!」と言いたげな顔をしとった。その頬は若干赤くて、俺までつられて赤くなってしもた。
確かに、屍が現れる前までは、支部にいたナマエはんがこっちに派遣されてきたちゅうことで久しぶりに会って、ほして京都案内をしとったけど。俺は内心デートみたいやて浮かれとったけど。それを屍にぶち壊されてさっきまでキレとったけども。
先輩は「い、いやそのえっと…」と必死に言葉を探しとる。もし俺のことをなんとも思ってへんのやったら、この人のことや、「可愛い後輩に会えると〜」位言う筈。つまりおんなじことを考えてたかもしれんわけで。……こら、期待してもええんと違う?

「あ、あのね金造く、」
「ちょお待って下さい!」

ナマエはんの言葉を勢いよく遮る。
腹は括った。チャンスは今しかあらへん。
男金造、いきます!

「俺、ずっと前からナマエはんのことが好きでした。つ、付き合って下さい!」

俺言うたぞ!ちょい噛んでもうたけど言うたぞ!
俺の言葉にナマエはんはさらに顔を赤くして(まさにゆでだこみたいでかいらしかったわ)、「お願いします」と呟いた。嬉しゅうなって思わず抱き締めると、ナマエはんは恥ずかしかったんか少しだけ身を捩ったけど、構わず腕に力を込めたらおずおずと腕を回してくれた。ほんまかいらしなぁ。俺今ほんま幸わせやわ。

やっぱ勢いって大事やんな!







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