筋肉痛が酷使した翌日じゃなくて2日、3日後にキたら年だ、って言うじゃないですか。
あれ、風邪でも同じなんですかね(でも次の日の午後だからぎりぎりセーフ?)


「ん……」
「目が覚めたか」

気がつくとわたしはベッドに横になっていて、傍らにはロトムを抱えたデンジが座っていた。

「わたし…あれ?」
「ジムの仮眠室だ。お前、熱出してぶっ倒れたんだよ」

デンジの言葉でようやく何があったのか思い出したわたしは起き上がり、不安そうにこちらを見上げるロトムをゆっくり撫でた。

「…ごめんね。心配掛けたね」

わたしの言葉に、ロトムは怒ったような安心したような、なんとも言えない鳴き声を上げた。

「さて。…うわ、もう夕方じゃない!ごめん長居して!ポケモンセンターに戻るね」
「…それに関してなんだが」

デンジの言葉に、わたしとロトムは顔を見合わせ首を傾げた。歯切れの悪い言い方に、何かあったのかと問いかけると。

「ポケモンセンターから届け物があってな…」

そういう彼の視線の先には、見慣れた荷物が一式。

「な…なんでわたしの荷物!?」
「急にナギサのポケモンセンターで受け入れなきゃならないポケモンとトレーナーがでたらしい」
「だからこの街に家があるわたしに出てもらう、と…?」
「そういうことだな」

「部屋が全部埋まってたらしいからな」と言うデンジに、わたしは「まじか…」と返すのが精一杯だった。

「何か問題でもあるのか?」
「これが大アリなんだよデンジさん…」

そう言ってわたしが家の鍵をなくしたことを話すと、デンジは溜息を吐いて一言。

「馬鹿だろ」
「…仰る通りです…」

嵐に巻き込まれ、挙げ句鍵をなくすなんて馬鹿の極みだと我ながら思う。そんなわたしを見てデンジはもう一度溜息を吐くとふっと笑った。

「そういう無計画で無鉄砲な所は変わってないんだな」
「む、無計画で無鉄砲ってどういうことよ!」
「どういうことも何も、そのまんまだろ」

そう言う顔が、瞳が、見たことがない位に穏やかで。無意識に顔が熱くなるのを誤魔化そうと声を荒げるけれど、デンジはそれを「はいはい」と言わんばかりに軽く流す。

(調子狂うなぁもう…!)

昔ならさっきの一言から口喧嘩になっていたのに。なんだか「お前は子供のままだ」と言われているようで、少し、いや、かなり悔しかった。

「で、どうすんだ」
「…うーん、どうしよ」
「……しょうがない、か」

特にあても浮かばず考え込んだわたしを見て、デンジがそう呟いた。その言葉の意味がわからなくて顔を上げたわたしに、デンジは「行くぞ」と声を掛けた。

「行く、って、どこに?」
「俺の家」
「あぁ、わかっ―――…は?」
「行くあて無いんだろ」
「や、まぁ、そうだけど」

行くところがあるのは願ったりかなったりだけど。幼なじみとはいえ年頃の男女が同じ家って、まずいんじゃないでしょうか。
そんなわたしの思いを察したのか、デンジは今度は馴染みのある笑みを浮かべて口を開いた。

「安心しろ。お前に手を出す程女には飢えてない」
「なんですって…!?」

そうだ。この、人に喧嘩をふっかけるような、腹立つ笑い方。これがわたしのよく知るデンジの笑みだ。
本当、懐かしすぎて涙が出るわこの野郎!
でも心の中ではこんなやりとりにどこかほっとしている自分もいて。

幼なじみっていいなぁ。

扉に手を掛けるデンジの背中を見て、わたしはなんとなくそう思ったのだった。



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