「疲れた……」

お昼を食べ終えてすぐ本部を出たのは良かったものの、本部からナギサシティが意外と遠かったのをすっかり忘れていた。おかげで到着時間、深夜2時。しかも、天気予報もろくに見ないで空を飛んで来たわたしは、最悪なことに海上で嵐に巻き込まれた。
なんとかムクホークに頑張ってもらったからナギサシティには辿り着いたけれど、上着の中に入っていたロトムはともかく、わたしはすっかり濡れ鼠だった。しかも、嵐の中で家の鍵も落としてしまったらしい。最悪すぎる。
だからポケモンセンターの看板を見た時には本気で泣くかと思った。本当に。
わたしたちを見たジョーイさんは目をまん丸にして、そしてすぐさまわたしたちをお風呂に案内してくれた。それだけじゃなく、ポケモンセンターにある患者用の服やスープとポケモンフードまで。
ポケモンセンターがこの世にあって、本当に良かった。

ジョーイさんが用意してくれた部屋に入り、布団に仰向けにダイブする。
驚いたのか、腕の中にいたロトムが少し暴れた。

明日は、デンジのところに行かないと。

心の中で「別に明日じゃなくてもいいんじゃない?」という声が聞こえる。
でも、明日行かないと、わたしはこのままずるずると会うのを引き延ばしてしまう気がした。それじゃあ、ロトムが可哀想だ。

ロトムは宙に浮いて活動したり移動したりするポケモン。だから宙に浮けないということは、足が無いのと同じ。一人じゃどこかに移動することもできないのだ。
それに、ロトムの特性もある。ロトムの特性「ふゆう」は地面から浮いていなければ意味がない。つまり今のロトムには地面技が効果抜群。
そして何より、このロトムは地面に着いているのが慣れないのか、時々居心地悪そうにしていたり、宙に浮こうと飛び跳ねたりしている。その姿が本当に辛そうで。

ロトムが鳴いた声で、はっと我にかえった。見れば、ロトムが腕の中から出ようともがいている。

「どうしたの?」

そう言って腕から離すと、ロトムはもぞもぞとベッドの上を這い、掛け布団を持ち上げては離し、また持ち上げては離しを繰り返した。
もしかして、寝ろってこと?
そう訊くとロトムはこくこくと何度も頷き、心配そうな顔をこちらに向けた。
…この子は、なんて優しい子なんだろう。

ロトムの頭を撫でて「もう遅いもんね」と言えば、ロトムは言いたいことが伝わってほっとしたのか、にっこりと笑った。




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