ここ最近、毎日のように夢を見る。しかも最近見る夢は、今まで見ていたものとは微妙に異なっていた。
夢の中の私は決まって18歳だった。そして周りに広がるのは半分以上が水に浸かった、廃墟のような古い建物。真っ昼間のように明るい青空の下、その光景は酷く不自然で。私は建物の一つの上で体育座りになりただただ泣いているのだ。
悲しかった。苦しかった。悔しかった。頭に浮かぶのはそんな思いばかり。でもそれよりも、何よりも思うのは―――。

“ねぇ、思い出して―――”


薄れゆく意識の中、いつも聞こえる声。
あなたは誰?



◆ ◆ ◆



「橘さん」
「はーい…よっしゃ!」
「素晴らしいですね。この調子で頑張って下さい」
「了解でーす」

返された悪魔薬学の小テストを見て、私は小さくガッツポーズをした。良かったまだ忘れてなかった!(理系が不得意な私にとってこれは奇跡だ!)
嬉しくて軽くスキップしながら席に戻ると、燐がテストを覗き込んできた。

「おま……100点かよ……!」
「へへん!どや!」
「す…すごい…!」

と、聞き慣れない声が聞こえたのでそっちを見れば、そこにはつい最近塾に入った女の子の姿が。

「えっと…杜山さんだよね?」
「う、うん!…橘さん、頭良いんだね!」
「そんなことないよー。まぐれまぐれ!」

「っていうか私名字より名前呼び捨ての方が嬉しいなー」と言えば、杜山さんは「あ、なら、私のことも呼び捨てで…!」とわたわたしながら私に言った。か、可愛い…!

杜山さ…しえみはフツマヤの娘さんなのだと前に燐と雪男から聞いたけれど、ずっと海外で活動していたからか、私は彼女と面識が無かった。というかそもそもフツマヤに行ったことは一回か二回位しかないので、奥さんに顔を覚えられてもいないと思う。もし顔を覚えられていてしえみに話したことがあったりしたら、私がここにいることに対して不審がられてしまうところだった。…私ホント運良いな。

そんなことを考えつつしえみと話していると。

「なんやと!?俺はな、祓魔師の資格得る為に、本気で塾に勉強しに来たんや!!」

急に聞こえた声に、吃驚して「ひいっ」と肩を竦めてしまった私。見れば燐がトサカ頭の子(あっ前に鍵ぶつけようとした子だ)と何やら言い争っている。…と言っても男の子の方が正論を言っていて、燐が明らかに圧されているんだけど(かっこわるいよ燐…)。

「何やってんのあの二人……しえみ?どうかしたの?」
「えっ!?ど、どうもしてないよ?」
「なんか元気無いように見えたけど……大丈夫ならいいや」

そう言えばしえみは「心配してくれて、ありがとう」と笑った。でもやっぱりその顔は少し強張っていて、それが少し気になった。ほら、私一応先輩だからね!可愛い生徒達が心配なんだよ!

燐と男の子の方は雪男がすぐに仲裁に入った為、殴り合いだとかいった大事になることもなく授業が終わった。
燐、あんたそんなんでこれから大丈夫か。


Title by メルヘン




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