瞭がタケルと共に外に出た時には、既に一連の出来事は終わりを告げていた。地上に降りた瞭が最初に見たのは、2つの大きな卵らしきものを前に、何やらノートパソコンをいじっている男性の姿だった。





「光子朗さん!」
「……タケルくん!彼女はどうやら無事だったようですね」

タケルが呼び掛けてからかなりの間を置いて、男性が振り替える。赤茶の髪と落ち着いた雰囲気が印象的な男性だ。

「紹介するね。この人は泉光子朗さん」
「泉光子朗です。瞭さん…でしたよね?」
「あ、はい。高科瞭です」

雰囲気通りの落ち着いた声と共に手を差し出され、瞭は戸惑いつつも握手をした。こういったことは正直慣れないのだ。

「瞭!」
「真琴!」

勢い良く駆け寄ってきた真琴は、その勢いのまま瞭の肩を掴んだ。

「あんた何無茶してんの?! 私が光子朗さんたちに会えなかったら、どうなってたと思ってんの!」
「そこはほら…友人を信じて…」
「んな言葉に騙されるか! 私心配したんだからね!」

がくがくがく、と肩を揺さぶられながら、瞭は苦笑した。
蜂のような生物―――フライモンというのだと後から聞いた―――に自分が囮になった時、実は不思議と瞭は恐怖を感じなかったのだが、今思えばそれは助けがくるという予感めいたものだったのだろうか。そう内心首を傾げていた瞭の横に、音も無くレナモンが現れた。その姿を見て、光子郎が「そうだ」と口を開いた。

「少し聞こうと思ったのですが…レナモン、君は瞭さんのパートナーですか?」
「パートナー?」

光子郎の言葉に、瞭が疑問符を浮かべる。レナモンは何故か躊躇うかのように目を閉じると「……そう」と肯定した。

「彼女を…瞭をずっと待っていた。何度も探して…やっと…」

噛み締めるかのような、静かな口調。それが瞭には何故か引っかかった。
それだけではない。瞭は改めて自分がどれだけ非日常的な事態に置かれているのか、今更ながら―――自分でも馬鹿だと思う程今更なのだが―――考えていたのだ。

「あの、此処にいるレナモン達は、なんなんですか?パートナーって?」

瞭の困惑した言葉に答えたのは、光子郎だった。

「彼等はデジタルモンスター、略してデジモンと呼ばれている存在です。…少し場所を変えましょう。人が来ては少し面倒ですから」

「真琴さんも宜しければ」という光子郎の言葉に、真琴は「聞かせて下さい」と即答した。わからないことははっきりさせたがる、彼女らしい答えだった。

「では、先ずは僕の家に行きましょう。僕の家なら色々資料もありますし。…お二人共、帰りが少し遅くなってしまいますが、大丈夫ですか?」
「私は平気です。真琴は?」
「うちも今日は親の帰り遅いから」

瞭と理羅の返事を確認すると、光子郎はノートパソコン2つの卵を抱え上げて歩き出した。




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