最近、ふと思うことがある。
それは酷く後ろ向きなことだけど、思わずにはいられないんだ。
だって、もう、時間が無い。


今年初めて参加した夏期講習は、正直言って地獄だった。公立だからかクーラーが全く効かない教室は熱く、遠く黒板に書かれている英文と向き合う気も失せた。三年生だから行っておいた方がいいと思って来たけど、これは無い。窓側の一番後ろなのを良いことに、俺はシャーペンを置いて窓の外を見た。下を見れば校舎横、ちょうど陰で見づらい位置の茂みが大きく揺れている。彼処にはアグモンが隠れていた筈だ。
…おい、あんまり動くと見つかるだろ!
そう心の中で叫んでも3階から1階まで届く筈が無い。でも、叫ばずにはいられなかった。アイツ、絶対隠れきれてないのわかってない。

「八神君、八神君」
「…ん?」

注意できない歯がゆさと見つからないかという心配で、きっと俺の顔が酷いことになっていたんだろう。隣から聞こえた心配そうな囁き声で、やっと俺は今授業中だということを思い出した。
そして、ついでに先生ともばっちり目が合ってしまった。

「八神ー、お前余裕そーだなー」
「いや…そんなこと…」
「よし、お前この文を節に直せ」

まじかよ。
しかも、よりにもよって分詞構文とか。英文法において難しいと言われてるアレだろ?逆なら、分詞にする方ならできる自信あったのに…いや自業自得だけどよ!

「えっと…ん?」

不意に袖を引かれて、考えるふりをしながらさり気なく横を見る。すると、さっき囁き声で俺を呼び戻してくれた女子が、何やらノートを指差していた。
見れば、そこには英文が。

「…?び、Because she was left lonly, she felt so sad.」
「お、出来たか。珍しいこともあるなー」
「…放っといて下さい…」

俺の答えに満足したのか、先生は再び黒板を使って説明に入った。ほっと息を吐いた俺は、隣で板書をしている女子のノートを軽く指で叩いた。

「さっきはありがとな」
「ううん、困った時はお互い様だよ」

俺の言葉に小さく、でも明るく笑ったその女子は、板書から目を離すことなく俺の言葉に返した。彼女が集中しているのがわかったから、俺はそれ以上会話をすることを止めてシャーペンを握り直した。

彼女の笑顔が、やけに印象的だった。


サマーサイダー
(あ、名前訊くの忘れた)



続きます。
拍手のお返事はmemoにて!

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -