110612 兎とサイコメトラー

「うっ…ぐす……」

明かりもつけず椅子に座り込む姿に、帰宅した僕は訳がわからず立ち尽くしていた。見れば三角座りをした彼女の手に握られているのは僕が幼い頃から大事にしていた玩具で、そこで僕はやっと彼女の涙のわけを理解する。

「…“視た”んですね?」
「…っ、ご、ごめ……」

彼女もまた僕と同じNEXTであり、その能力は接触感応能力。サイコメトリーとも呼ばれるその力は、触れた物から記憶や映像を読み取ることができる。恐らく彼女は、この玩具を通して僕の過去を視てしまったんだろう。

「机に…ぶつかっちゃって…落ちそうになって……っ」
「大丈夫ですよ。気にしないで下さい」

そう言って彼女を抱え上げ、僕の膝の上に乗せる。すると彼女の手でぎゅっと頭を抱えられた。嗚咽をこらえながら、優しく頭を撫でられる。それがどこか懐かしく切なく感じて、僕は彼女を強く強く抱き締めた。

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