うたかた花火



今日はイッシュの一大イベント、ヒウンシティで花火大会がある。

チェレンとベルから一緒に見ないか、と誘いの連絡が来たが
まあ、空気を読んで断った。


どうせこんな日だしどこの町にいたって皆浮かれていて落ち着かない。

ふ、と頭に浮かんだのは故郷カノコタウン。
家に帰るのは去年のお盆以来
約半年振りに母の顔をみた。
人口も少ない小さなこの町はやっぱり静かで、だけどぬくもりがあった。


一年前――――
ライモンシティの観覧車からその花火を見た。もちろん女の子と。

わあっと夢中で窓に張り付き満面の笑顔を見せた君
緊張で顔を合わせられなかったけど、ガラスに写る君はほんとに綺麗で花火に負けないくらいきらきらしていて、でもどこか儚い笑みで空を見つめていた。
僕はもう心臓が壊れるくらいどきどきしてもちろん花火なんて見る余裕はなかったし正直これしか覚えていない。
それでもふわふわと熱に浮かされたような、幸せな気分だった。

―――――


ドン ドドン


花火大会が始まったようで、遠くから低い音が響く。

自室のカーテンを開く、と遠くに小さく花火が見えた。
距離があるからなんだろう、去年よりも霞んで見える。





やっぱり、やっぱり僕は君のことを思い出してしまったけど、

君もまた、僕のことを思い出してくれるんだろうか。


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supercell/トウコちゃんは他地方に行っちゃった妄想


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