ジュンとヒカリとコウキ





「あーあっつい!」

「ジュンうるさいバカ!」

「なにがバカだ!イライラするなら一人でしとけバーカ!」

「だからうるさいって言ってんでしょ!あんたがうるさいからイライラしてるのバーカバーカ」

「んだと、ヒカリお前」

「こーら、ちょっと落ち着け」


 夏が本気を出してきた8月半ば。それは毎年猛暑に入る、育てやじいさんの代わりに預かっているポケモンと運動を兼ねて遊ぶという短期のアルバイトのようなものだった。一昨年一度猛暑日に思いきりぶっ倒れた育てやのじいさんは、ナナカマド博士というツテから若い俺に頼んできた。
 そして今年も例のごとく依頼が来たわけだが、せっかく若い衆が増えたのだからと何故かジュンとヒカリの3人でやることになった。とはいっても、やることは至って簡単であり、その一方で大変な労働であったりもする。一口にポケモン達と外で遊ぶだけ、言ってもこの暑さである。
 人数が増えたのでサッカーをしていたが、元気なポケモン達と比べトレーナーはすぐにへとへと、いつのまにか走り回るポケモン達を傍観しながら木陰に座り込んで今に至る。ジュンとヒカリの喧嘩は日常茶飯事、それを制する俺の声もまたそうだった。


「よし!"暑いって言ったら負け"ゲームしよう」


 喧嘩は落ち着いたといえども、まだ不機嫌な顔をした後輩2人にそんな提案をしてみた。俺の唐突な発言に初め二人はぽかんとしていたが、すぐにジュンがいつものワクワクとした笑顔で言った


「よっしゃー!それいいな!よし、せーので開始な!」


 えぇ、とヒカリはまだ不服そうなので、もう一言付け足した。


「負けた人がアイスおごりで」




 全員が納得したところでゲームが開始され、数分経ったが、案の定未だ誰も発言しない。様子を伺う様に周りをチラチラ見たり、ぼーっと遠くを見ていたり。これはこれで静かでいいなぁとか考えていると、沈黙を破ったのは意外にもヒカリだった。


「ジュン、向こうに転がってるボール取ってきてよ」

「はぁ?やだよ、あっt…」

「あー!ジュン今言った!早速言った!ねぇコウキくんも聞いたよね?」

「うーん、言った…かな…?にしてもジュン、チョロすぎるよ」

「言ってねーし!ヒカリが勝手に騒いでるだけだ!"あっ"しか言ってねーもん!」

「もんじゃないわよ男でしょ、ネチネチ言わずに黙って認めてアイス買ってきてー♪」

「だから、おっま、……ヒカリぃ…!」


 30分も経たない内にまたぎゃあぎゃあと喧嘩になっている2人に呆れていると、いきなり背中が冷たい感覚に襲われて思わず声をあげてしまった。驚いて振り替えるとキャッキャとワニノコが飛び跳ねながらこちらに手を降っている。


「ワニノコ…お前はほんとにいたずらっ子だなぁ」


 どうやら被害は俺だけではないようで、ジュンなんか頭から水を被って髪がぺしゃんこになっている。ケラケラ笑っているワニノコだけでなく、いつのまにかさっきまで走り回って遊んでいたポケモン達が木陰に寄ってきて、きゃいきゃいじゃれてきた。


「おいこら頭に乗るなぁ!こんの、お前ら覚えとけぇえ」


 頭にエイパムを乗せたまま、ジュンがワニノコを追いかけ回し始めた。他のポケモン達も楽しそうにそれに続く。ヒカリも暑いから日当は嫌だと言ってグレイシアを抱き締めているが当人は無視して強引に歩き出しているので、徐々にずりずりと引きずり出されている。
 夏は暑いし、暑くてだるい。でも楽しい。暑さから生まれる、独特の高揚感を思いきり楽しむなんて今しかできないことじゃないか?
 濡れたシャツの裾を絞って木陰から駆け出すと、頭上でアゲハントが涼しい声で鳴いた。






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どうやって終めたらいいかわからなくなったんですけど
いつやるの?今でしょ!
みたいな感じでお願いします

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