ヒカリは近頃ほぼ毎日この町にやって来る。なんでも僕の妹にポケモン図鑑の手伝いをしてもらってるとかなんとか。大量発生の情報ならテレビでどこででもわかるのだが、妹が毎日ヒカリに会うのをたいそう楽しみにしてるもんだから(やつはとにかく"ヒカリさん"が好きらしい)、なんだかんだと毎日通っているわけである。
妹に会った後は研究所の周りをうろうろしている僕か中にいる博士に挨拶をして去っていく。
「メリークリスマスこんにちは、コウキくん!」
斬新な挨拶と共に、にこにこと笑顔で駆けてくる彼女に自然と笑みがこぼれる。結局今日は朝からずっと、らしくもなく悶々と考えていたわけだが、いざ本人を目の前にすると今まで考えていたことはどうでもいい気がした。頭がリセットされたように言いたいことだけが浮かんでくる。
「やぁ、ヒカリ。今日は何を捕まえに行くの?」
「はい!今日はキッサキの方にデリバード捕まえにいってきます!」
「そっか!寒いから気を付けてね。その後、何か用事あるの?」
「え?いや、特には」
「じゃあせっかくのクリスマスだし、ポケモン達のために美味しいものご馳走してやらない?」
文字通り目を輝かせたヒカリの元気な返事を聞いてから、5時にナギサのポケセンでという約束を取り付けて彼女を見送った。
1人になってふぅ、と溜まっていた息を吐く。家族以外とクリスマスの夜を過ごすなんて何年ぶりだろうか、いや初めてか。そんなことを考えた途端、背中がぞわっとして心臓が大きくどくん、と鳴った気がした。緊張、しているのだろうか。いや、それよりもさっきから気持ちが浮わついて落ち着かない。僕は柄にもなくそわそわとそれからの時間を過ごすことになった。