よくあること




「あ!トウヤ、そのマフラーいいね!」


 年も明けて少し久しぶりに会った彼女が僕のマフラーを掴んで言った一言。


「そう?結構適当に選んだんだけど。」

「いやいや、トウヤなかなかセンスいいのね。っていうか個人的に好きなデザインというか好みというか。」

「へぇ、ありがと…」


 新調したマフラーは青を基調としながらカラフルなストライプデザイン。去年使っていたマフラーはほつれてしまったので年末のセールで本当にかなり適当に直感で選んだものだが落ち着いた色合いが気に入っている。トウコに自分の持ち物に何か言われるのは初めてだが、お気に入りのマフラーをいいねと言ってもらえたことが嬉しくてむずむずした。ベルも靴は新調したその日に気づいて声をかけてくれるし、髪を切ってもそうだ。
 些細な変化にもすぐ気付くのが女子らしい。でもこうやって言葉にしてくれて、ましてそれに好意をもってくれるのは照れるけれど嬉しいことだ。





 新年会と称して幼馴染み4人でチェレンの家に集まった。相も変わらずくだらない話題ばかりで時間は過ぎていったが、今日のベルはごきげんなのかいつもに増してよく笑う。


「ベルなんかいいことでもあった?」

「え??ふふ、そうなの、いいことね…」


 でれでれと微笑むベルを見て僕とトウコの視線は一斉にチェレンに向かう。ベルがごきげんな理由。そんなことは聞く必要もない。何故ならそれは一目瞭然の、ベルの腕に見慣れない装飾品。


「あぁ、はいはい。ラブラブですこと。」

「好きだねぇ。幸せだねぇ。」


 僕とトウコで疎むような視線をチェレンとベルに投げかけると二人して顔を真っ赤にして俯く。いやいや、見てるこっちが照れるからね。二人っきりにしてやろうか〜とか冗談を言っていると、とうとうチェレンが反撃してきた。


「人のことばっかり言ってるがお前らもだろう。」

「そうだよ〜私がチェレンを好きなようにトウコもトウヤのこと好きだってこの間言ってたじゃない!」

「………。」


 とんでもない暴露だ、ベル。冗談だとわかっていても自分の顔は火照っていくのが事実。何かしら言わなければと口を開いても言葉がでない。


「えー…そうきたかぁ」


 自分は俯いたまま言葉も出せない反面、当の本人トウコは苦みを帯びた笑顔で対応している。この差は男として恥ずかしいと思いながらもそのままトウコの言葉を待った。一刻も早くこの空気を消し去ってほしかった。だが、彼女の言葉に僕は驚愕する。


「そりゃあ好きだけどね」

「ほっらー!たとえば?どんなとこが?」

「なんで本人の前で言わなきゃなんないのよ、ベル酔ってるでしょ…」

「酔ってない!飲んでないよバカ!ほらほら言ってみて、トウコちゃん」

「もう…わかったって」


 僕の望んでいた否定の言葉を出してくれなかった彼女は机に乗り上げて問い詰めるベルを押し退けながらちらりと僕をみた。その顔は焦燥に満ちた僕の顔とはまるで対照の余裕やくだらなさすら感じているような大人びた表情。その顔が急速にゆっくりと僕の顔に近づいてきて一言。


 「トウヤの…マフラーがすき」


「…もう!トウコちゃん!この際なんだから冗談はやめてよー」

「冗談じゃないわよ、だってこのマフラーほんとに素敵じゃない?私持って帰りたいくらい」

「呆れた。どうせ俺たちはわかってるのに…さっさと言えばいいものを。」

「好きなんだけどー、でもやっぱりトウヤに似合ってるっていうのがあるんだよね」


 話が噛み合っていないのは意図的なのか、ぶうぶうと文句を言う二人を背にトウコは例のマフラーを手にとり僕の首に軽く巻きつけながらささやいた。


「ほんと、素敵。似合ってるよ。」
「…ありがとう。」


 心臓が文字通り跳ねた。いつも通りの顔をした、はずだが顔はまだ熱いままだ。



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「トウトウとマフラー」


なんだか無理矢理ですごめんなさい
結局なにが言いたいのやら
リクありがとうございました!


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