アールナイン




偶然通りかかった9番道路にトウコがいた。でも明らかに悪そうなスキンヘッドの男に話しかけられていた。若干引きながら見せている笑顔も張りつけたようなそれだった。 自分でもよくわからないが、その顔を見た瞬間、俺の頭は血がのぼったようにかっとなって。理性も何もないままに身体は勝手に動いていた。


「おお、結構強そうなポケモン持ってんじゃねぇか。」

「いくらなんでもこの子達は〜「おい、おっさん。こいつに何する気だ。」


こんなに大きな声が出るものなのか、と自分で自分に驚いた。予想外の俺の出現に目を丸くするトウコから何か言うのが聞こえたが、何を言っているのか全然わからなかったから無視をして、真っ直ぐスキンヘッドの男を刺すように睨み付けた。いや、えっと、とどもる男に一発かましてやろうと胸ぐらを掴んだ瞬間、


「ちょ、ちょっと待ってくれ、これは冗談だ。俺だってトレーナーだ、人の大切にしてるポケモン無理矢理奪うなんてこと本気でしねぇよ!」


必死に懇願する男の言った言葉を、ゆっくりと脳が理解していき、手が緩む。自分が思った以上に汗をかいていたことにそこで気付く。少し慌てたようにトウコが言った。


「トウヤ落ち着いて!この人、バトルで俺が勝ったらお前のポケモンくれ、って言ってきたけど、私前に1度バトルしてるから知ってる人だし、面白いジョークが好きな人なのよ、彼も反省してるみたいだから許してあげて。」


まず安心感が一気に押し寄せた。男から手を完全に放し、一歩さがる。深呼吸。汗をかいた身体が冷えてきた。さっきまで自分がしたことをさかのぼって思い出し、羞恥に自分が赤くなるのがわかった。でもすぐに冷静になり考える。俺は別に間違ったことをしたわけじゃないだろう。むしろ当然のことをしたはずだ。トレーナーなら誰でもロケット団らの一件は知っている。最近のプラズマ団のこともイッシュなら周知の事実だ。だからたとえ冗談でもこんなことはしてほしくなかった。と悶々と考えにふけっていたら、いきなり手の甲に冷たいものが当たった。


「ワルビル、お前…!」


どうやら男のポケモンが俺達のためにサイコソーダを持ってきたらしい。


「また迷惑かけちまったな…ありがとうな、いつもありがとうな…!」


ワルビルに走り寄り、熱いハグをしながらそう言う男を見ながら冷たいソーダを一口飲む。するとトウコが寄ってきて耳元で静かに言った。

(彼のジョークは絶対に自分や誰かのポケモンが関係するの。シンオウ出身の人なんだけど、昔ギンガ団に…色々あったらしくて…。だから人とポケモンの繋がりをとても大切にしているの。だから彼と話すのは本当に楽しいわよ。)

やがて男もこちらへやってきて、改めて俺に謝ってきた。俺も男に謝った。そしてありがとう、と伝えた。

すると男はニッコリと笑って握手を求めたので、俺は手を差し出しながら、ごく自然に言った。


「俺とポケモンバトル、しませんか。」


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自分でもよく意味わかってないです

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