ジャラジャラと手枷に付いている鎖がうるさく鳴る。いくら押さえつけようとしても、鎖の先にある鉄球が邪魔をして上手くいかない。それどころか長い鎖を踏みつけ転んでしまうという結果。生まれつき不運な男。それが黒田官兵衛という男だった。

「何故こうも上手くいかない!!」

大声を出し八つ当たりを試みるも、その反響でパラパラと砂が落ち口に入った。ペッペッ、と吐き出しながら黒田はもう泣きそうな気持ちであった。
今日も今日とて鍵を探しに行こうと外に出れば、運悪く大谷達と出会ってしまった。もちろん黒田は鍵を要求するが、素直に渡してもらえる筈もなく。溜め息と共に、溜まった鬱憤を少しでも吐き出すしかないような結果となるのだった。

「何故小生ばかりがこんな目に合わなきゃいけないんだ…」

鉄球に問いかけても当然返事など来るはずもなく、虚しさが増加するのみであった。だが、不運を呼び寄せる体質である黒田に更なる不運が「毛利が乗り込んできた」という部下の報告と共にやって来た。

「一体何の用だ。…どうせお前さんも小生を笑いに来たんだろうがな」

長い前髪により見え辛いが、黒田の瞳は毛利を睨み付けていた。だがそんなもので怯む毛利な訳もなく、フンッと鼻を鳴らすだけであった。

「ああ、もう用がないなら帰れ。小生はお前さんに構ってるヒマはないんだよ。」

鍵を探しに行きたいんだ、と面倒くさそうに告げる。重たい腰をあげ、そしてまた重たい鉄球を引きずる。
「待て黒田。」
「…一体なんだっていうん、だ…」

毛利の呼び止める声に眉を潜めて振り返る。そこにはいつも吊り上がっている眉が自信を無くしたように下がっていて、目線が定まらない様子。頬にも赤みがさし、照れているようだ。正にもじもじしていると言える。そんな様子を見て、何故か黒田も照れ臭くなってきた。なんだ、この青春みたいな雰囲気は。

「我はその枷…」

ゴクリと黒田は生唾を飲み込む。一体何を言われるのだろうと期待に胸を膨らませた。毛利の口が恐る恐るというように開いた。

「似合うておる、と思う。」
「…はあ?」
ついポカンとした顔になる。だが、そんなことも気に止めず毛利は恥ずかしそうに両手で顔を隠していた。

「大谷はいい趣味をしておるな。」
「やっぱり小生を馬鹿にしにきたんだろう!!もういい帰れ!!お前さんなんか帰り道転んで怪我しろ!!」

黒田は叫んだ。足は地団駄を踏み、腹立たしいことを全身で表現するが、毛利は鼻で笑い出口へと歩いていった。

「…毛利は一体何しに来たんだ?」

黒田の中に一つ疑問が残るが、楽しそうに帰る毛利からはただの暇つぶしであると予想できる。





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