6
歯車は回り続ける。永遠に。


煙が辺りから引いた後、恐る恐る目を開けると見慣れた風景が広がっていた。
「ここが十年前ですか」
五年前からの並盛は知っていたが、どうやら十年前と殆ど変わっていなかったようだ。少し懐かしい匂いがする。
「さて、どうしましょうか」
十年前に来たのは良いものの、どうすれば良いのかわからない。今彼は何処にいるのだろう。

「いたいっ。はなせっ」
途方に暮れた瞬間、子供の助けを求める声がした。
高音で子供っぽさはあるがこの声には聞き覚えがある。
「こんな簡単に見付かる物なんですかね」
ふぅとため息をついて声のする方へ足を向けた。
だんだんと声の主へ近付いていく。
子供の姿が見え始めた直後声のかわりに金属音が鳴り響いた。
骸は一瞬身震いをした。
「やはり避けては通れない……ですか」
彼に頼まれ渋々来たが、出来ればずっと避けたかった。沢田綱吉の中に潜み今でも苦しめているのであろう彼の存在を時間で解決したかった。
しかし、この事実を知れば最早時間だけでは解決が難しくなる。
(さて、どうしましょうかね)
薄気味悪い笑顔を浮かべ子供を見る。
子供は先程のいじめでつけられたかすり傷や痣が痛々しい。
「あの、お礼をー……」
子供が見ていた方を見ると思った通り、彼が立っていた。
「またね、沢田綱吉」
そう言って彼は歩き出す。
骸は子供のことが気になったが今はこっちが優先なので子供にわからないように彼の後をこっそりつけた。
子供から見えなくなった所まで来たところで先に骸が沈黙を破る。
「お久しぶりです。雲雀恭弥」
男はゆっくりと振り向き僅かに口を開いた。
「六道骸」
「何故十年前の彼に近付いたのです」
雲雀は答えない。ただ僅かに笑みを浮かべているだけだ。
「今まで彼をどれだけ傷付けたかわかって、」
言い終わる前にピリリリと電子音が鳴り響く。どうやら雲雀のケータイのようで、ポケットから取り出して耳に当てた。
電話相手の話を聞いていたのか暫く無言であった。
「やっぱり十年後でいいよ。そっちの方が殺しがいがある。子供を殺る趣味はない。それに十年前は並盛の住人だったから、彼」
何の話をしているのか雲雀の台詞だけで読めてしまう。
骸は嫌な予感が的中してしまい、やはり来るべきではなかったのだと後悔した。

彼は、雲雀恭弥は十年前の沢田綱吉を助けたのではない。
結果的に助けただけで本来の目的は沢田綱吉の殺害であったのだ。
しかし彼の台詞から推測すると十年前の沢田綱吉ではなく十年後、所謂『今』の彼の殺害に計画を変更したらしい。
雲雀の電話は長い。まだ話していた。
「まあ久しぶりに色々回ってからそっちに戻る」
その間骸は僅かに戦闘体制をとった。
この男はどういう経緯かわからないが沢田綱吉をいいようにもてあそんた挙げ句殺害まで目論んでいるのだ。生かしておくには危険すぎる。
それに気付いた雲雀は馬鹿にしたような笑みを骸に向けた。
「ちょっと用事が詰まってるみたいだから切るよ。……好きだよ、ルイーザ」
そう言って雲雀は通話を切った。
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