5
入江くんに事情を話したら、もうすでに作ってあったようで、すぐに使える状態のバズーカをくれた。
今までの10年バズーカと違い、希望の場所に自分が行けるようになっているらしい。
こんなに用意周到な訳を聞いたら、リボーンに作れと言われていたようだ。
何かを企んでいるのは間違いないが、今はそんなことに構ってられる暇はない。

早く知りたくて知りたくて、ただそれだけのために廊下を全速力で駆け抜ける。

「むくろっ!」
はあはあぜいぜいと息をきらして走ってきたので多分今ものすごい顔をしていたのだろう。
骸は一瞬ぽかんと口を開けて、次の瞬間堪えきれなくなったのか吹き出した。
こんなに笑っている骸は俺は見たことがない。
「骸っ!」
あまりの恥ずかしさに思わず怒鳴ると骸は涙目になりながら、
「すみません。あまりにもすごいっ……くっ」
とバズーカを受け取ったものの、笑うのをなかなかやめてくれなかった。

腹筋が痛くなるほど笑い転げてもう気がすんだのか、すっきりした顔で、
「ではいってまいりますか」
と仕事モードに入った。
切り替えが早いのは骸の良いところであり、時には腹がたつところである。

「悪いね、骸。ありがとう」
「まあ会えるかどうかわからないのでお礼は今言わない方が良いと思います」
「ううん。行ってくれるだけで本当に感謝してる。」
「そうですか」
では、と骸はバズーカを自分に向けた。
「行かなくても誰だかわかるんですけどね。本当は」
「え?」
バズーカを放つ直前、何か言われたような気がしたが、爆音に包まれてかき消されてしまった。

骸は10分経ったら戻ってきた。どうやらこれも従来の10年バズーカを改良してパワーアップした性能のようだ。
10年前の骸は相変わらずで、簡単に話せるところだけ話すと
「そうですか」
とだけ言って部屋を物色したり、俺に絡んできた。
余りにも性格が変わらないので俺は本当に10年前の骸なのか疑心暗鬼だった。
この10年で変わったのはどうやら見かけだけらしい。
適当に彼をあしらっていると、ぼすんと音をたてて戻ってきた。
「おかえり、骸」
物凄く真剣な顔をしていた。
「骸……?」
どうだったと聞く雰囲気ではない。
そして聞くか聞くまいか悩んでいると骸が先手をうってきた。
「沢田綱吉。マフィアの資料はどこです」
すごく恐い。何があったのだろう。10年前で。
「えっと、ここにあるよ」
机の上に山積みになっている中から何とか探しだして引っ張り、骸に手渡す。
「少し借りますね」
「いい、けど」
骸は怒っていた。何に対してかはわからないけど、確かにあの顔は怒っていた。
だから、俺は訳もわからずただ突っ立っていただけで、10年前のことを聞きそびれてしまったのだ。
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