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「いたいっ。はなせっ」
子供の声がする。どうやら虐められているらしい。と思ったら虐めていた男たちが全員地面に崩れ落ちた。
「あのっありがとうございます」
助けられたのは小学生の俺。助けてくれたのは……

『またね、沢田綱吉』

はっとして目を見開くと俺の寝室だ。また同じ夢を見たらしい。汗が顔を伝って気持ち悪い。
いつも同じ場面から始まり同じ場面で目が覚める。
俺を助けてくれた人は名前も名乗らず、『またね、沢田綱吉』となぜか俺の名前を知っていた。
しかし当時見たことない顔であった。
そのせいで、夢にその人が出てきてもうろ覚えなので未だに顔がわからない。お礼を言いたいのに誰だかわからず余りのもどかしさにため息をついた。
「ため息を一つつくと一つ幸せが逃げるらしいですよ」
いつの間に入ってきたのかドアの前に静かに佇んでいる。
「骸。お前いつ入ってきていいと言った」
「沢田綱吉を寝取るためです」
「またそれか。いい加減にしてくれ」
話が噛み合わないのはいつものことだ。
これまたいつも通りげんなりとお前どっかいけよオーラを出して訴えるが彼にそんな攻撃は効かない。痛くも痒くもないのだ。

「まあいいじゃないですか。また夢でうなされていたみたいですし」
「まじで」
「まじです」
最初からいたのかこの野郎。
出会ってから5年経ってウザさと髪の長さが正比例してきたのはもう言うまでもない。
切ってやろうかなと思うが、きっと切らしてはくれまい。命の次の次の次位に大事なものらしい。勿論本人談である。

「そんなに気になるなら見てみてあげましょうか」
は、と口から声にならない息が漏れた。
「んなこと出来んのかよ」
「分かりやすく言うと10年バズーカの使用によって出来る空間の歪みを逆にすれば可能です」
「よくわかんないけど出来るんだね」
「まあそのためには10年バズーカを改造しなければなりませんが」
「入江くんに頼もうか」
こんなのがボスでボンゴレは大丈夫なのかと思いつつもま、いいかと思ってしまう俺は我ながらあっぱれだ。
「俺が……行っちゃダメなのか?」
ふと浮かんだ疑問をぶつけてみれば骸は一瞬驚いたように目を見開くがすぐいつもの妖しげな笑みに戻る。
「過去は出来るだけ変えない方がいいと思いますが」
それは暗に俺が行くなという合図。
わかったよと両手を上げて、「じゃあお願いしてもいいかな」と手を合わせる。

骸はチョコレート一ヶ月分で手を打ちましょうと言って突如現れた霧の中に入り見えなくなった。
残された俺は地味に使えない頭をフル回転させていた。
一ヶ月分か。一個10円のあのチョコレート何個分だろうか。
ボンゴレをついでから5年経った今でも俺の金銭感覚は相変わらず庶民的であった。
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