3
俺の気持ちとは裏腹に雲一つない青い空が広がっている。
母親の声で重たい瞼を開けた俺にはそれはとても眩しくて暫く直視することが出来なかった。
脳が覚醒するまで何もせずただ部屋を眺める。時間的にとっくに授業は始まっている。
今から走っていっても遅刻は免れない。
いつもなら遅刻しないようにと俺を起こしていた親がこの時間まで起こさなかったことには感謝だがここまで起きなかった自分にも驚いた。
彼と付き合ってからは、「風紀が乱れる」ということで徹底的に模範生のような生活を強いられ、最近は自力で学校に間に合う時間に起きられるようになっていたのだ。

「貸し一つだな」
颯爽とさも当たり前のように窓から入ってきた黒い影にまたかよとげんなりする。そこは窓ですから。
「リボーン。お前なんで」
ここにいるんだよと言おうとしたら恐らくレオンが変形したものであろう十手に阻まれた。
「俺が何も知らないと思ったら大間違いなんだよ」
突然リボーンの黒い瞳から悪戯っぽい輝きが消えた。

「お前、浮気されたんだってな」
平然とそう述べる彼に俺は思わず抗議する。
「別にそうと決まった訳じゃ、」ない。と言いたかったのに言えなかった。
脳裏に甦る甲高い声。耳を塞ぎたくても手と耳の隙間から侵入して脳内を汚染していく何かが軋む音。
夢と思いたくても余りにもリアルすぎる状況音が俺を現実に縛り付けている。
嫌だ。嫌だ。嫌だ。
俺の変化に気付いたのかリボーンは笑うのをやめ、一文字に口をむすんでいる。

「別れろ」
「嫌だ」
今一番聞きたくない単語が飛び出した。俺は勿論聞く耳を持つつもりはないので耳を手で覆う。
秘密を作り、必死に隠す彼とその秘密を知りながら見てみぬふりをする俺。
嘘と罪にまみれた偽りの関係でも何かで彼を繋ぎ止めたかった。
今の俺には彼なしでは耐えられない。

そんな俺を嘲笑うかのようにその声は容赦なく俺の耳を通り抜ける。
「今のあいつにはお前は無理だ」
「そんなことない」
黙っていればこれからも続くであろう彼との関係。俺が目をつぶれば良いだけの話だ。
「危険だ」
「何が」
視界が霞む中彼に尋ねたが返事はない。
「お前は雲雀とボンゴレ、どっちをとるんだ」
お前何言ってんの?たがたが雲雀さんと俺のゴタゴタに何でボンゴレが入ってくるの。俺は目でそう訴えたが、リボーンは「まだそうと決まったわけじゃねぇから今は言えない」と言うだけだ。
「もしボンゴレを見殺しにして雲雀をとるなら何も言わねぇ。お前は次期ボスだからな。」
「ねぇ何言って……」
「もし、ボンゴレをとるなら雲雀には一切関わるな。接触すら許されない。雲雀には俺から言っておくから心配ない」
「守護者はどうするのさ」
余りの展開の早さに頭がついてこれない。
リボーンは何を言いたいのか。何故雲雀さんとボンゴレを天秤にかけねばならないのか。
「雲は、暫く空席だな」
この一言でリボーンがどれだけ真剣なのかわかった。
よくわからないが俺は恋人か組織かを選ばなければならない崖っぷちにたたされている。
余り実感の沸かない俺はとりあえずボンゴレを選んだ。

後々この選択が正しかったのだと証明されることになる。しかし俺は何故この時彼と生きる道を選ばなかったのだろうかと自分自身に問わざるを得ない。

正しい選択だとしても俺は五年経った今でも時々後悔のような自責の念にかられることがある。
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