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俺は先生が教室を出るより早く飛び出した。
「沢田っお前何焦って」
「すみません!」
先生が何か叫んでいたけどどうせ説教だからと無視を決め込んだ。
ハアハアと呼吸を乱しながらたどり着いたのは応接室。
嫌な予感を払拭したくて、雲雀さんの特別だという確証が欲しくてやって来てしまったがさてそこからどうする。
(雲雀さんいるかな)
とりあえずドアノブに手をかけた瞬間静電気が手に走る。
(いてっ)
思わずドアノブから手を放したら俺の周りから音が消えた。
聞こえる音は自分の呼吸音とドアの向こうから聞こえる微かな。
(これは、)
ごくりと喉を鳴らすのさえ躊躇われる中聞こえてきた音は俺の想像を絶するものだった。
(喘ぎ声……)
相手はわからないが確かに甲高い声がドアの向こうから流れてくる。
漫画などでよくある行為の中で出てくる声。
ここは彼、雲雀恭弥が実質私室としている応接室だ。この中で女の喘ぎ声がするということは相手の声が聞こえなくても誰かわかってしまう。
(いや、そんなはずないよ)
中の声を聞くのをやめ、俺はずるずると扉に寄りかかった。
(だって雲雀さんは俺と)付き合っている。筈なんだから。
そっと口に出して呟いてみる。
付き合うって何だろうと馬鹿な頭で考えてみた。
手を繋いだりキスをしたりひょっとしたらその先まで。
付き合っている相手がいるのに行為を行っていたらそれは世間では浮気または不倫という。
この状況は誰が見ても雲雀さんは。
そうしたらここ最近の冷たい態度の理由もわかる。
正直俺が無理矢理押して押して今に至るわけで雲雀さんから一度も好きだ愛してるという戯言を言われたことはない。
こういう時女子ならどうするんだろうとふと考えてみた。
やはり黙って立ち去るのか。泣きながら。
或いは堂々と中に入って事実関係を正すのか。
これは俺が女子の場合だ。世間的に「普通ではない」俺等では実行は不可能だ。
さらに皮肉なことに妙に頭が冴えて涙腺が刺激されるということもない。
とりあえずここに座り込んでいても埒があかないと思い、腰を上げてズボンの埃をはらう。
今日は帰ろう。
最近はご無沙汰していた早退をしたくなった。
俺は悪い夢だと思いたかったのかもしれない。


その日は暑い訳でもないのに何故か目が冴えて夜更かしをしてしまった。
このままでは遅刻して彼に怒られると思ったが今日のことが頭にフラッシュバックして余計脳が活性化する。
僅かに開けた窓から入るすきま風が髪を撫でる。
少し気持ちが良かった。
今なら眠れそうな気がして目を閉じた。


俺は知る術などなかったのだ。
このあと自分等がどうなるかなんて。
取り返しのつかないことをしてしまうなんて誰が想像出来ただろうか。

今でも俺には、出来ない。
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