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「あ…ありがとうございますっ…あのっ名…名前を」

するとその人はふっと笑って去っていった。

「―…し」


(え?)


『またね、沢田綱吉ー…』



儚くて愛しくて…




「ヒバリさん!ちょっまっ!!」 ドテッ


「煩い」ゴンッ

「いったー!!」


休日の朝、誰もいない筈の並盛中校庭に2つの影があった。


沢田綱吉と雲雀恭弥である。

2人は俗に言う『恋人』なのだが、学校に来た目的は勿論違う。


沢田は補習、雲雀は風紀関係だ。



「うぅ…ヒバリさん容赦ない」

沢田はトンファーで殴られたところをさすりながら、涙目で言った。


「だって君本当にうるさいし。」



「久々に2人きりなのに冷たいですよ…」

「そうだっけ?」


「そうですよ!!」

付き合いはじめて1年以上なこの2人。そろそろ倦怠期に突入しそうな頃だ。



「えっと…じゃあ、俺ここなんで、またあとで!!」

「じゃあね。」


沢田が補習の行われる教室に入ったのを確認すると、雲雀は軽くため息をついて、応接室に向かった。




(ヒバリさん最近冷たいなあ…)
沢田は補習をうけている最中でさえ、頭の中にはヒバリさんのことしかなかった。

(もともと冷たかったけど、最近はウザそうな顔までされる、し…)


ここ1ヶ月、沢田が雲雀を追いかけると、雲雀はいかにもウザそうに眉をひそめるのを沢田は知っていた。


前はやっていなかったから、くせ、ではないはずだ。

そして、いつも何か言いかけるが、すぐお茶を濁す。


(言いたいことがあれば言えばいいのに…)


(言いたいことが言えないほど、俺って頼りないですか…?)



(…恋人なのに…)



(でも、恋人っていえば、ヒバリさん一度も好きって言ったことないな…)


実はこの2人、恋人同士といっても、キスやそれ以上は勿論、最近は手を繋ぐことすらしていないのだ。



沢田は嫌な予感がした。



(ヒバリさん、もしかして俺のこと、好きじゃない?)

(でも、告白したとき、『好きです』って言ったら、『うん』って…)―モシカシテ、サメタ?


ブンブンと慌てて首をふって、沢田は雲雀のことを考えないようにした。




今は補習に集中しなきゃ。



これ以上考えたら、どんどん悪い方向に考えがいってしまう。



気のせいだよ。ヒバリさんは俺のこと、好きな筈―…



暫くしてチャイムが鳴り、補習の終わりを告げた。
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