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その瞬間、沢田は辺りが見えなくなった。


周りは白白白。色がついているのは自分くらいだと沢田は思う。


(それと、『僕』もだよね)

沢田じゃない沢田の声がした。


(お疲れ。後始末は僕にまかせて)


「誰…?」


ふっと横を何かが通りすぎる。

「君は…」




横切ったそれはニヤリと笑うと消えていった。


『バイバイ沢田綱吉』



そっか、君がー…


「…わだっ」


「沢田っ」


自分を呼ぶ声がして、綱吉は目を開けた。

すると、目の前で心配そう(ではなかった)な雲雀がいた。


「はいっ何でしょうか!?」


「なんでしょうかじゃないだろ。君…戻ったんだね?」


「…はい」

貴方のいる世界に戻ってきました。


「…俺、今まで雲雀さんがいない世界にいました」

「知ってる」

「向こうの俺は骸と付き合っていて」

「…知ってる」

雲雀は骸、と聞いて眉を潜める。


「…ヒバリさんがいない世界があるというのが信じられなくて」

「そんな中、向こうの骸に迫られたんですけど」


俺がいつも考えていたのはヒバリさんでした。と綱吉は小さく呟く。

「…さわっ」

何か言おうとする雲雀を制して、綱吉は言いたいことを一気に吐き出した。


「ヒバリさんは夢に出てきてくれていたのに俺はいつも気付かないふりをしていたんです!」


夢に出したのは綱吉なのだが、そこは置いとこう。


「…気付きたくなかったんです」


貴方を好きだと言うことを。


そう言うと沢田はボンッという効果音つきで赤くなった。



「俺、ヒバリさんのことが、」


「…もういいよ」

雲雀は綱吉を抱き締めた。


「君の気持ちは知ってたから」


「…え?」


雲雀がいうには、別世界の『沢田綱吉』が全てばらしたとのこと。


「んのやろっ…」


綱吉は怒りと羞恥で一杯になった。

バレバレだったなんて…



「…付き合ってあげなくもないよ」


「…はい?」

今あり得ない声がした。


「ヒバリさん、俺のことどう思っていますか?」


「草食動物」

「好きですか?」

「さあ」


ああ、やっぱり幻聴だったのだ。あの雲雀恭弥と二人きりで舞い上がっていたのだ。


綱吉はがっかりしながら、そりゃそうだよなと自分を慰めていた。


「君って本当馬鹿だよね」

「なっ…」

反論しようとして開いた唇は柔らかいそれで塞がれてしまった。


触れたのは一瞬。でも綱吉の思考回路を停止させるのには充分だった。


「君が好き、」
「かもしれないね」



嗚呼、なんだかんだ言って俺は向こうの『俺』と『骸』に感謝しなくちゃいけないらしい。


2009.06.25
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