……なんかおかしい。
まるで獄寺くんや山本が知らない人みたいな…
俺は遅刻魔なのに、獄寺くんは遅刻なんてしたことないという。
獄寺くんが嘘を言うとは考えにくい。
じゃあ獄寺くんの言っている『俺』は誰…?
「10代目…?」
「あ、ごめんっなんでもないよ」
嘘だ。なんでもないわけはない。
ここはホントに俺のいた『並盛』なのか?
不安で堪らない。
でも、今は落ち着いて冷静に考えなきゃ。
あれこれ考えたって始まらないんだから…
ガタンッ
俺は自分の机に座った。
(これは変わってない)
ほっとした。無機物まで変わっていたら落ち着かない。
そうこうしているうちに授業が始まった。
見知った先生。いつもと変わらない授業。
いつもは退屈で仕方がないものだが、今は安らぎの場所へと化した。
(今のところ、『俺』以外変わったところはないな…)
でも、胸がいたい。何か大事なものを失ったような…
それが何か思い出せないけど…
(…誰か、今の『俺』を知っているやつはいないのか…!!)
心のなかのその声は俺の中をぐるぐる回ったあと、消えていった。
[ 3/10 ]