「はあ…」

沢田は自室でため息をついた。

「結局来なかったな、ヒバリさん…」

沢田は着替えると、ベッドの枕に顔を埋めた。


「…ぅっ…えっ」

何故だかわからないけど、涙が止まらなかった。


どうしようもない関係に終止符を打たなければならないときが来てしまった。



もう少しこのままでいたかった。

「でも、もう無理だ…」

なら、今日まで好きでいさせてください。


ヒバリさん―…




(…あ、誰かが俺の頭を撫でてる)

(優しいし…懐かしい…)


誰かと思い、沢田は目を開けた。


「やっと、起きた」


「ヒバッ…」


一瞬目を疑った。5年間一度も忘れたことのない、思い人。

「なん…」

なんでいるんですか、と聞こうとしたけど、涙が邪魔して、言えなかった。


「…久しぶり」

5年ぶりに会う彼は、背も伸び、前よりずっと大人びて見えた。


「…ご…ごめんなさっ」


沢田の脳にフラッシュバックされたのは、5年前の別れを告げた、あの日の光景。『ごめんなさい、俺、もう貴方とは付き合えません』



雲雀は雲雀らしく生きてほしいから、泣きながら選んだ選択を後悔しなかったことはないとは言い切れない。

だけど、当時の沢田はそれが精一杯。



「ん…」


沢田は、もう会えないかもしれないという不安に駆られ、5年間ためていた思いを吐き出した。


これで清算できる思いを。


「俺っ…あんなこと…たけど…っぱり…好きで…」


ちゃんと言えているかわからない。ちゃんと伝わっているかわからない。


沢田の気がすんだあとも、雲雀は黙ったままだった。


「…話を聞いてくれてありがとうございました。」



「君の話はこれで終わり?」


「…はい…」


今さらなんだよ、と殴られるかもしれないが、覚悟していたことだ。

沢田は、目を瞑って時を待った。
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