それから一ヶ月。手紙の行方はわからないままだった。


でも、最近はそんなことに構ってられないほど忙しい。


沢田は書類の山と格闘しながら、ため息をついた。


「あー…最近いいことないなあ…」


手紙はなくなるし仕事はあるし。暇のひの字すら見当たらない。


「…会いたいなあ」

ボソッと沢田は呟く。それは誰に向けられたものなのかは沢田自身ですらわからなかった。


ふと、机の端にあるメモ帳とペンを持って何かを書き始めた。


何ヵ月ぶりかわからない雲雀へのラブレターだった。

勿論、届かないのは承知の上だ。要するに自己満足。

書き終わって読み返して、沢田は恥ずかしさで死ねる気がした。

5年も会っていないのに、まだこんなに好き。

いつかは諦めなきゃいけない恋だけど、一人で思うくらい、いいよね…?

そして、過度の睡眠不足のせいで、あっという間に沢田は眠りの世界に陥った。






(これは…夢?)

いるはずのない人が、目の前にいる。

「ヒバリさんっ」

あまりの懐かしさに涙が止まらなかった。


「久しぶりだね。」

そういって5年前より少し大人びて見える雲雀は微かに笑った。


「ごめんなさっ…俺、自分から言ったの…まだ…好きです」

涙が邪魔して、上手く言えなかったが、雲雀は笑って沢田を抱き締めた。


「知ってるよ」


ヒバリさ…


そこで沢田は目を覚ました。

気が付くと、夢から覚めても涙が止まらなかった。

「…覚めないで、欲しかった」

夢の中なら貴方と幸せになれる。言いたいことも言える。


無理なのはわかっているけど、覚めて欲しくなかった。

夢だとわかりたくなかった。




「…っふっ…ぅ…」

沢田は机に突っ伏して泣いた。


机には、手紙の代わりに何も書かれていない紙が置かれていた。


そして、ドアの向こうでは、リボーンが無表情で立っていた。


「…そろそろだな」


そう言うと、リボーンは執務室をあとにした。
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