『俺、沢田綱吉は雲雀恭弥を一生愛することを誓います』
「…」
執務室でボンゴレ10代目沢田綱吉は書類の山から顔をあげた。
(ヤバッ俺寝てた…?)
時計を見ると、さっきより一回り針が進んでいた。
(一時間も寝ちゃったかあ…)
今でも納得しきれてないが、ボンゴレ10代目に一応就任した沢田綱吉は毎日書類と共に過ごしている。
「…またあの夢か…」
沢田は軽くため息をついた。
ここのところ同じ夢ばかり見る。
大切な人に言いたくて、でも言えなかったことを言っている夢。
「…ヒバリさん…今何しているんだろ…」

中学時代から沢田と雲雀は俗に言う『恋人同士』であった。しかし、10代目に就任するためにイタリアに行くときに、並盛が好きな雲雀を連れていくことはしたくなくて、自分のせいで彼が縛られてしまうのは嫌で。守護者は別にイタリアにいなくても構わないと聞いたから。
だから、別れを告げた。勿論一方的に。彼に自分という鎖を繋げたくなかったから。
そしてそれから三日後、沢田はイタリアへ向かった。
雲雀に何も言わずに。
あれから5年。
噂によると雲雀は『匣』の研究であちこちをまわっているらしい。
元気ならそれでいい。沢田はふっと笑った。
自分から別れを告げたくせに、まだ沢田は雲雀のことが好きだ。いや、雲雀しか愛せなかった。きっと雲雀に話せば自分からふったくせにとか言われるだろう。でも、好きだからこそ別れた。
沢田は書類の山をある程度片付けて机の引き出しを開けた。
中にはここ五年の雲雀宛の手紙が入っている。
書いたのはいいが、相手はどこにいるかわからないし、未練がましいと思い送れなかった一方的なラブレター。
捨てることが出来ず大事にとってある時点で十分未練がましいよな、と沢田は笑った。
ふと、手紙の山から一枚抜いて開けてみた。いつ書いたかはわからないが、そんな昔ではないはず。
『俺、沢田綱吉は雲雀恭弥を一生愛することを誓います』
中には拙い文字で誓いの言葉が書かれていた。
少し照れ臭いが、今も同じ気持ちだ。
そして窓から入る風に心地よさを覚え、沢田は目を閉じた。
(30分位したら起きよう…)
右手にはあの手紙を持ったまま、沢田は眠りについた。
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