クリスマス特別編
※本編終了後?
本編とは切り離してお楽しみ下さい

鼻歌を歌いながら何やら楽しそうに動いている青年がいる。
その青年を見ているだけで何もしない青年もいる。
「っヒバリさんも手伝ってくださいよ」
ほら、と差し出された飾りを一瞥して手で押しやった。
「やるわけない。クリスマスツリーの飾り付けなんて」
ええーと不満の声があがるがこれで情に流されると後々後悔するのは目に見えている。
今日執務室に入ると、昨日までなかったそれが部屋の大部分を陣取っていた。
「何これ」
「何ってクリスマスツリーですよ」
そんなことは知っているから。
普段の執務室は鳴りを潜め、部屋の中はクリスマスのデコレーションで埋めつくされている。
クリスマスと言えど社会人には休みなどない。なのにこの様である。
「こんなお祭り騒ぎで大丈夫なの」
呆れ半分、疲れ半分で沢田に尋ねる。
「大丈夫です。今日のために仕事、2割増しで頑張りましたから」
屈託のない笑顔を向けられ、すっかり毒づく気も失せた。
雲雀は溜め息を大袈裟について、飾りを一つ手にとった。
「これはどこにかければいいの」
「流石ヒバリさん」
目をキラキラと光り輝かせて指示を出される。
「勘違いするな。このままだと足の踏み場がない」
「またまたっ」
キャハハ、と今時女子高生でもしないような笑い声をあげて沢田は飾りをツリーの周りにかける。
このままでは本当に足の踏み場もないのだが、そんなところに気をかけないのは昔から変わらない。
暫く飾り付けをしていると、なかなかの出来だ。床もようやく見えてきた。
「お腹空きましたね」
恐らく朝からずっとこの作業をやっている沢田がぼやく。
時計を見ると確かにお昼の時間だ。
「そうだね」
沢田はツリーを飾り付けるために台代わりにしていた机から飛び降りて靴を履く。
「うん。なかなかの出来ではないでしょうか」
ね、と笑いかけられた。どう反応すればいいか一瞬戸惑う。
「まあ手伝ってあげたし、何か見返りを貰ってもいいくらいだよね」
「何が欲しいんですか」
普段の行いが悪いせいか、何を言われるんだろうと怯えを顔に滲ませている沢田に雲雀は近付く。
「何すっ」
「目を閉じて黙って」
そっと彼の顎を摘まんで更に距離を近付ける。
そして自らも目を閉じる。
クリスマス。いくら仕事が忙しくとも恋人と過ごしたいという夢は誰もが持つものだ。
部屋には二人きり、誰も入ってくる気配すらない中、遠慮は無用だ。
どうやら二人の昼食はまだまだ先の事らしい。

<end>

2010.12.25


本編ではまだ出会ってすらいない二人ですが、こんな日もいつか来たらいいねという期待を込めて。メリークリスマス!
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