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「最近のマフィアの動向はどうだ」
「特に大きな動向などはありませんが、最近急激に勢力を拡大しているマフィアグループがあります」
「何て名前?」
「トゥットファミリーです」
「じゃあ引き続き調査と監視を頼むよ」
「はい」
失礼しました、と言って部下が出ていくと俺はため息を一つついて机の上の書類の山を見る。
「トゥットファミリーか……」
少し前から骸が、『そのファミリーには充分注意して下さい』というものだから部下に監視させていたら案の定、ビンゴだった。
最近ボンゴレと敵対する色々なファミリーを吸収していて急激に勢力を拡大している。ボンゴレにとっては危険株だ。
(もしかしなくてもいつかトゥットファミリーと接触しなくてはいけないのかもしれないな)
ボンゴレ十代目にして突然初代ボンゴレのような自警団に近いマフィアグループになって、反発しているマフィアは少なくない。それらを吸収しているということは、流血沙汰は避けられない未来なのかもしれない。
(出来ればそういうことはしたくない)
無駄な争いを避けるために自己防衛しか認めないようなファミリーにしたのだ。人をむやみやたらに殺したくはない。
しかし骸の勘の良さに感謝する。同じ悪の臭いでも感じ取ったのだろうか。まあそんな事を深く考えてはいけない。
こうして考えていても机上の空論に過ぎない。とりあえず見守るしかない。
俺はトゥットファミリーの事から離れ、ぶつぶつ愚痴を溢しながら、書類の山を崩しにかかった。

そしてその予想は最早避けられない事態となってしまった。
「大変です十代目!」
獄寺くんがかなり慌てた様子で部屋に飛び込んできた。嫌な予感がする。
「マンドルラファミリーのボスが暗殺されました。トゥットの奴等です」
血の気がひいた。マンドルラファミリーは年月は浅いものの、ボンゴレとの関係はキャッバローネに匹敵するものがあった。
そのマンドルラのボスを暗殺すると言うことは即ちボンゴレへの宣戦布告。
思わず強く拳を握る。
獄寺くんはやや息が整ったのか、落ち着いてしかし言いにくそうに言葉を述べる。
「実はトゥットファミリーから話し合いの申し入れが……」
ギリ、と歯を食い縛る。
表面上は話し合いで事を収めさせて下さいという意味だが、きっと話し合いなどにはならず、問答無用で暗殺されるだろう。
トゥットファミリーはあれからもどんどん勢力を拡大させ、マフィア界の真のボスであるボンゴレに目をつけたのだ。
「行く必要はありませんよ十代目!」
獄寺くんは流石その意図するものがわかっている。しかし行かないと戦争になる。
「十代目に何かあったらそれこそ戦争になりますよ!」
確かに自分が今死んだりしたら次期ボンゴレボスの座を争い、無駄な血が流れるのは目に見えている。どうすれば、どうしたらいいんだ。
「……わかった。ちょっと考えさせて」
そう言って獄寺くんが部屋を出ていった後、徐にケータイを開く。
彼に聞いたってどうなるかわからないが、超直感が告げている。彼なら何とかしてくれるだろうと。
何度かコール音がして相手が出た。
「もしもし、骸?」
彼ならいい考えをだしてくれる。改めてそう思った。
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