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その扉は無機質な音をたてて閉まる。
中では彼が書類にサインをしているところだ。とても話しかける雰囲気ではない。
暫くそのままの状態でいると彼が痺れをきらしたのか、只一言だけ口にする。
「座れば」
ズルズル上履きを突っ掛けソファーに腰かける。中々弾力性のあるソファーで勢いよく飛び乗ったらよく跳ねそうだ。
等と下らない想像をする。
彼は相変わらず書類と格闘しており、俺は居心地が悪くモゾモゾと体を揺らす。そして思いきって顔をあげた。
「あの、山本たちを待たせてるので、用件がないなら、」
帰ってもいいですか。そう聞こうとしたが出来なかった。
突如彼が今まで忙しなく動かしていた手をピタリと止め、此方に向かってきたからだ。
逆光で表情はよくわからないが、確実に自分が地雷を踏んだらしいということはわかった。
「すっすみません」
ここはとにかく謝るのが一番だ。そう思い謝罪を口にするが彼の周りの温度は下がったまま上がらない。
自分の目の前に来るとヒバリさんはついと腕を伸ばし、俺の顎に手を当てた。
「もう、限界」
何が、と言う声はヒバリさんによって喉の奥に押し込まれてしまった。
キスさえ一度もしたことがなかった俺の初めてが今の現在進行形でしているキスだ。
名前しか聞いたことがなかった所謂ディープキスというのを彼としている、否されている。
口内を彼の舌が駆け巡り逃げることは許されない。
しっかり後頭部を押さえられ、俺は意識が飛びそうになるのを必死に堪えた。
どうしてなんで嫌だやめてなど彼には通用しないのかもしれない。
俺にはもう抵抗する力もままならずただされるがままになっていた。
するり、と彼の手が直に肌に触れた。何故か触られたそこは熱を持っていて恥ずかしさで死にたくなった。
「やめてくださっ」
やっと解放された口でなけなしの抵抗を試みるが無駄に終わる。
これ以上は流石にまずい。誰か。そう心の中で叫んだ。
バンと音をたてて扉が開く。その奥から現れたのは俺の友人二人だった。
二人はこちらを見て驚いていた。そりゃそうだ。
「十代目!」
獄寺くんの声を合図に安心したのか気が遠くなっていった。
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