カウント4
「うわぁぁぁ遅刻するぅぅぅ!!!」

俺は全速力で走ったけど、間に合わなかった。

「うぅ…」

俺は泣きそうになりながら、トボトボと歩く。

入学してから2ヶ月、ダメツナにしては頑張った方だよ、うん。

逆に今まで無遅刻無欠席だったのが不思議なくらいだよ。


そうこうしているうちに、校門が見えてきた。案の定閉まっている。


(門乗り越えるのめんどくさいなあ…)

小学校の時から経験しているので、乗り越えるのは簡単なのだが、めんどくさい。


かといってここまで来た以上引き返すのもこれまためんどくさい。

俺ははあとため息をついて、門をよじ登る。

毎度のことで油断していたが、自分はダメツナである、ということを忘れていた。

登るときはよかったのだが、降りるときにバランスを崩してしまった。


ドンッといういい音がして、俺は背中から落ちてしまった。

「…いてて…」

俺は背中をさすって服についた砂をはらって立ち上がろうとした。

すると、俺の目の前に黒い影がそれを阻んだ。

「僕の目の前で白昼堂々遅刻とかいい度胸だね」

「ヒ…ヒバリさっ…」

まずった。小学校の時のようにうまくはいかなかった。なんせ風紀が乱れるのを何より嫌う風紀委員長様が今はいるのだ。

こんな時間まで見張っていたなんて計算外だった。というか…授業は…?ヒバリさん…


「君には関係ないだろ」

「はいまあそうですが…ってえ!?!?」

俺、口に出してないよな。ということは…心の中を読まれてる?

ま、まさかな…

「君、考えてることバレバレなんだけど」


マジですかー!!!やっぱり読まれてたんですね俺!!!

俺はあはは、と苦笑いをして後退りをした。

早くこの人から逃げなければ。もし捕まったら最後、俺の命は何個あっても足りないだろう。

そう思っていた矢先、腕を掴まれてしまった。

「だから、君わかりやすすぎだから」

「はい…」

もう俺は終わりだ。さよなら、皆さん…

俺は死を覚悟して目をつぶり、時を待った。が何も起きない。

何事かと恐る恐る目を開けると、ヒバリさんは何かを思い出したように、目を見開いている。

「君、前に会ったこと…」

「…?」

会ったというか、風紀委員長様が自己満足で絡まれてた俺を結果的に助けてくれたことはあるけど、あれは会ったに入るのか?
あの頃(といっても一ヶ月ほど前の話だが)は雲雀恭弥と知らず、普通にお礼を言っていた。我ながら、無知とは怖いと思い知らされた出来事だった。

「まあ、一応会いました…」

彼は覚えてないだろうけど。どうせヒバリさんの脳内では、なんか獲物のそばにいた草食動物としてカウントされているに違いない。

ヒバリさんはふぅんといって手を離した。

「気が変わった。今日は見逃してあげる」

「…はい?」

「聞こえなかったの?僕は気が短いんだ。」

咬み殺さない…?あのヒバリさんが…?なんで…?ってそんなことはどうでもいい。

「ヒバリさんっありがとうございます!」

ヒバリさんに一応お礼をいったあと、これ幸いとばかりに俺は下駄箱に向かって駆け出した。


ふと腕を見ると、ヒバリさんに握られていた所は赤くなり、熱を帯びていた。




2009.06.01.
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