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「遅いですね」
「そうだな」
山本と獄寺は時計を見上げながら呟いた。
帰りが遅い友人を待つこと一時間。流石の二人も心配していた。
しかし二人は彼がどこで何をしているのか知らされていなかった。

時を遡ること約4時間前。

いつものように昼御飯を屋上で食べていたら突然ツナが口を開いた。
「俺、放課後ちょっと用事があるから先に帰ってて」
「どのくらいかかるんですか」
獄寺は慌てて食べたため喉にパンを詰まらせ、それを呑み込んでから返事をした。
「んーわかんないけどすぐだと思う」
「なら待ってます!」
な。そう言って獄寺が山本の方を見やる。
「今日は俺も部活ないし待ってるな」
ツナは一瞬驚いて、すぐに笑顔を浮かべる。
「ありがとう」
そして暫く談笑をしていたら昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。

そして今に至る。あの時何の用事か聞けばよかった。獄寺は後悔したが今更もう遅い。
補習なら終礼で担任から知らされるから獄寺等が知らない訳がない。
しかし他に心当たりはない。では彼はどこにいるのだ。
時間と共に不安も大きくなっていく。
そうもしていられず、二人は同時に立ち上がった。
「俺はこっちを見ていくのな」
「じゃあ俺はこっちだ」
たかだかこのこと位で酷い慌てぶりだが、獄寺はツナに関してはすこぶる勘が働くのだ。
嫌な予感がする。
当たらないで欲しいと願いつつ獄寺は廊下を走った。



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