伸ちゃんに私は会いに来た。何回でも言おう。私は!伸ちゃんに!会いに!来た!……なのに何故か私は彼氏の腕の中です。うっわ、恥ずかしい!

「名前さん?」
「…あ、誉くんどうかした?」

制服よりも薄い生地だからだろうか、密着度が限りなく高くて恥ずかしい。けど、抱きしめられるのは慣れてるから大丈夫なはずなのに。彼氏だって考えてるから駄目だったりするのかな?でも、まあ、とりあえず!

「腕を離そっか!誉くん!」
「ごめん、それは無理かな」
「…即答?」

がっくりと頭を垂れながらも、首に回っている腕を掴んでどうにか剥がそうと試みる…けど、男女の力の差をなめてかかり過ぎたのか、誉くんは更に私を抱きしめる力を強くした。

いつもの誉くんらしくないと思いたった私は、誉くんに向き直るように少しだけ力を入れて身体を捻った。そして、少しだけ目を細めた誉くんと目が合った私は、小さく息を吐いた。

「どうしたの?」
「…小熊くんに嫉妬しただけだよ」
「……」
「もう何回目だろう。凄く、彼が羨ましいや」

ぎゅっと抱きしめられて、誉くんの肩に私は顔を置く格好になった。誉くんは、私の首筋に顔を埋めたまま細々とした声で話し出す。少し声が震えてる事には触れないから安心してくれと言う意味を込めて、くしゃりと頭を撫でた。

「私もね誉くん。これでも嫉妬しちゃってるんだから」

あんまり自分だけだって思わないでね。私はゆっくりと彼の首に腕を回した。




(弓道場だって)
(忘れてたけどさ)
(いつもドキドキさせられるんだし)
(今はいいよね?)