びーえるくさい
泣いて泣いて、ぐちゃぐちゃになった顔をお揃いにしては綺麗な白衣の袖で拭うのを眺めながら溜め息を吐いた。名前を呼んだって反応は無し。幼児退化でもしたのかと疑問に思いながらも、夜久が淹れて行った不味いお茶を喉に流す。
「おーい、大丈夫か?」
ベットに腰掛ける俺と、俺の膝に顔を埋めながら大きな身体をもぞもぞと動かすその様子は何年も昔の事を思い出す。ああ、あの頃なら姉さんが名前を宥めていたんだっけな。
どうすれば泣き止むものなんだろう。額に手を添えて何度目になるか分からない溜め息を吐けば、肩を跳ねさせた名前が俺を見上げて銀色に縁取られた睫毛をふるりと揺らした。
「こ、たちゃ」
「はいはい、怒ってないから。明日は休みだろう?少し此処で寝てなさい」
触れた髪は柔らかく、吸いつくように指に絡まり、生きているようで笑みが漏れる。
泣き虫なままかと呟けば、握られた白衣が皺を作り、それを否定する。可愛い否定だなと包み込むように手を握れば、力は少しずつ和らいだのだった。