「すっずくーん」
「いきなりどうしたんだ?」
「いーや、懐かしいかなと」
「懐かしい、けど」
少し気恥ずかしいかな、なんて笑う錫也にメロキュンすると思ったら大間違いだ。気恥ずかしいとかお前月子に言われたらあれだろ、月子可愛いとか思っちゃうんだろ。…なんて思いながら錫也の言葉にわざとらしく首を傾げてやる。
「けど、なあに?」
身長が平均女子より高くたって、あたしと錫也の身長差なら上目遣いも楽勝だろ。いやあ、あたし月子に似てて良かった。いや、この場合は月子があたしに似てて良かった、か?
そう悩みながらも、少しだけ顔を赤らめた錫也にあたしの口角は上がりに上がった。そんなあたしに気付いた錫也は、あからさまに溜め息を吐いてあたしの頭を月子にする時よりも強めに撫でる。からかうのはやめなさい。嫌だ。…陽炬?ごめんなさい。
幼なじみ同士の単なる掛け合い。それを嫉妬とか言う面倒くさい感情を込めて睨んでくる彼女が至極不思議でしょうがない。──けど、錫也達には近付くなって怒られるしさあ…。
そしてふと、視界に色素の薄い茶色が目に入る。追いかけるようにそれを見つめれば、嬉しそうに風に茶色が靡いていた。
「あの子も転入生?」
「確か一年生だったな」
錫也の言葉に相槌をしながらも、私はその色から目を離せなかった。