(補正でみんなといようだなんて、何様なんだろう)

呟いた言葉は、隣を駆けるマドンナにかき消された。





「金城も星詠み出来るんですね」
「う、うん」
「大変やなかった?僕なんか昔、視えたもんを片っ端から兄貴に言うて困らせましたし」

向かい合うように座りながら頬杖をつく一条、くん。先生に頼まれてから、何かと話しかけてくれる希少な男の子。来たくて来た訳じゃないこの世界を唯一楽しめそうだと思ったのも、彼のおかげ。

「私は、何も言わなかった…なあ」

今話してるのは、私の星詠みについて。初めて視た時やその時の反応。過去を振り返って意味を探す。一条くんが教えてくれた自分の力への理解の仕方だった。

授業は、楽しい。けど、私と天文科にいる補正を付けた先輩がいる所為なのか、あの夜久月子先輩にはお姉さんがいる事になっていた。

マドンナのお姉さんは、マドンナと真逆。誰の手もいらない。そうやってマドンナの守りを固める人。

それが当たり前だと、笑う人。

(……話してみたい、な)

顔はそっくりでも、口は悪くて男らしい。既存してるキャラクターじゃない彼女と話せば、この世界に来た意味を掴めるかもしれない。

淡い期待。浅慮かもしれないけど、会ってみたい。

「夜久、陽炬先輩」
「ん?陽炬先輩がどうかしたんですか?」
「あっ、ううん!違うの、」

焦がれる彼への気持ちには、蓋をして。


私は、ただ見つめる。