「ぬぬっ…!?」
「どうした翼」
「どうかしたんですか?」
いきなり聞こえてきた声に聞き覚えがあるなと思いながらも、ファイルや何やらを抱えたまま廊下を歩いていく。そうしたら、突然背中に衝撃を与えられて、倒れそうになるのをどうにか堪える。
「凌兄ちゃん!凌兄ちゃん!」
「っ…お前、翼やな」
「ぬは…痛い痛い痛い痛いー!!」
「その長い髪抜いてやろうやないか…!!」
「やだーーーー!!」
俺よりでかい図体をじたばたと暴れさせながら、髪の毛を守る翼にますます俺の眉間に皺が寄る。それに気付いた翼が俺の首に腕を巻きつけて小さく笑った。…そして俺にくっついたまま、ぬいぬい!と呼ぶ翼に少しずつ近付く足音を俺は振り返った。
「…げ」
「げ、って酷いやん。…ぬ・い・ぬ・い」
「やめて下さい一条先生」
いつもの自信有り気な面影は無し。…こいつはいつも俺を嫌がる。よう分からん。…とりあえず翼にファイルを持たせて手伝わせたろ。
「凌兄ちゃん?」
「青空、次の授業やねんけど…」
「あ、はい」
「無視するなー!」
「おい、翼!」
隣に立った青空と、顔を見合わせて笑った。