私が入学した学校は男だらけだった。共学になりたてだったその学校で、私が初めての女子生徒だったらしい。本当に最初の女子生徒が私って男子生徒の皆さんに申し訳なかったな、ってあの頃はよく思った。──だがしかし、だ。
男子生徒は所詮、男だった。
「お前そんな本持ってくんなよ」
「え、これお前に借りた奴だし!」
「あ、マジか」
「マジだっての!」
ただのエロ本を回し読みする男子。最早私は空気と言うか、偶に読まされたりするのは頂けない。天月も来いって!なんて手招きされれば何故か行く私。
「天月は誰が好き?」「黒ビキニ!」
「おま、即答かよ!」
「じゃあ、安部と向島は?」
「「赤ビキニ!」」
「胸でかすぎ!」
「それがいいんだろ!」
「安部に同意ー!」
二人は中学も一緒だったからほぼ一緒にいる友達でもある。既に女として見られていない自分に、諦めてはいるけれど、この二人は何なんだろうか。──普通女子にエロ本を見せるか?
それに、もうすぐ入学式だ。やっと私達にも後輩が出来る。新任の先生も来るらしく、クラスの男子は女の先生とかいるかな?と何回も私に聞いてくる。いい加減うざったらしいが、そんな風に話掛けてくれるのが嬉しいからか私は普通に返事を返してしまうのだ。
───まあ、新学期の前にあった期末テストが終わってこのテンションの高さには、納得はいくんだけど。
「天月は今年も不知火会長に勧誘されんのかな」
「どうだろ?いい加減、諦めてくれるんじゃないかなあ…」
「天月ーーー!!!」
エロ本を閉じて机にしまった安部は、向島に笑いながらそう言って、それに返事を返そうとした向島の言葉は遮られた。話題の中心人物となっていた元凶は、天文科の扉を勢い良く開いて、私の机の前で仁王立ちをする。
「天月、手伝え!」
「またですかー…?いい加減面倒なんですけど」
「うまい堂の限定パフェ!」
「さあ、行きましょう会長」
また食べ物でかよ!なんて言ってる安部に手を振りながら廊下を出た。春休みなのに私と安部達が学校に居るのは、補講授業があったから。今さっきそれが終わって教室で好き勝手やってたんだけどね。
生徒会室がある五階まで階段を使わないといけないなんて不便だし、足が痛い。眉を寄せながら隣を歩く私に気付いた会長が、小さく笑いながら手を出した。その意味を理解している私はその大きな手に自分の手を置いた。そして強く引かれたかと思えば、階段を会長は駆け上がり始める。
「かいちょ、速いです!!」
「はははっ、頑張れ頑張れ!」
余談だが、会長は留年しているので私より本当は一つ年上だったりする。留年してた理由は、興味が無いので聞いた事が無い。──まあ、私が会長に敬語を使う理由はただそれだけの理由だ。
「会長ー…ピアノの音がしますけど」
「……来たか」
「…あの、聞いてます?」
改訂/20120815