「暦ちゃん、悩み?」
「おわっ、…太一じゃん」
保健室でゴロゴロしていたら、不意に頭を撫でられた感触がした。思わず顔を上げた私を見つめるのは、幼なじみの津神太一。無表情で私を見つめているように見えるけど、実際は心配で堪らないと言いたげに頭をうりうりと撫でてくる。
大丈夫だと言う意を込めて太一の前髪を結んでいるシュシュを引っ張って外す。スルリと抜けたそれは私の手に収まり、癖が残って跳ねたままになった太一の前髪を見て、思わず私は噴き出した。
「ぶふっ!!……やっ、やばっ…!」
「酷い」
「無表情でっ、ちっ…近付くな!あはは!」
私の隣に並ぶように寝転んだ太一に頬が緩む。金久保くんの部活動について口出しは出来ない訳だし、今は久し振りの幼なじみを堪能しよう。会長も白銀さんも向島も安部もいないんだから、ゆっくり出来る。
枕に顔を埋めて、琥太郎くんの匂いするんだけどと顔を歪める幼なじみに、私はゆっくりと身体を寄せた。陽汰とは違う安心感に心が安らぐ気がして、私の意識は少しずつ遠退く。
「…寝ちゃう?」
「ん…ねむ、い」
「琥太郎くん来たら起こすね」
「ありが、と」
完全に目を閉じた私は、隣にいる太一を撫でようと手を伸ばす。不意に柔らかく触れた場所を何度も撫でて、私の意識は完全に落ちた。
「───…ゆっくり、寝てね。…暦ちゃん」
改訂20130105