悶々としながらも私は生徒会室がある5階まで駆け上がる。もう直ぐ、弓道部のインターハイだ。金久保くんもその副部長の子もきっと優勝したいんだと思う。
それは一年、二年と見守ってきた私や副部長の子だから分かるのかもしれない。小さく溜め息を吐きながらも、思考が前向きになるように深く息を吸った。
「───会長っ!!」
勢いよく開いた扉の奥にいた会長は、私が来る事を予測していたかのように笑いながら迎えてくれる。少しだけ汗ばんだ額を拭いながら向かい合うようにソファに座れば、会長は掛けていた眼鏡を外して小さく噴き出して私に問うた。
「…また誉か?」
「流石ですね会長、分かってる!」
「………、あいつは今インターハイに向けて必死だからな。何となく分かる」
「…デスヨネー」
当然だと言いたげに笑う不知火会長を見ながらも、溜め息混じりに返事をすれば、会長は私の頭を書類で軽く叩く。それでもやっぱり金久保くんが気になる私は、ソファの前にある机に額を乗せて唸った。
私には部活での金久保くんをしっかり見た事がある訳じゃないから、何も助言出来ない。会長に渡されたお茶を一気に流し込んで、ぐしゃぐしゃに髪を乱した。力になりたいんです、友達だから。小さくぼやく。子供の駄々を宥めるように撫でられる髪をそのままに、私は頭を悩ませた。
「お前が心配するだけであいつの力になってるよ」
「…本当に?」
「ああ、本当だ。俺を信じろ!」
「それは何か嫌」
「ぬわんだとおおおお!?!?」
「っいやあああああ!!」
改訂20130105