会長に案内された弓道場に小さく挨拶をしながら入れば、一人の男の子と目が合った。取り敢えず頭を下げれば、その男の子は目を丸くしては金久保くんに向かって何かを言っては再度私を見る。何だこの子。

「『女子生徒は夜久先輩だけじゃ?』だってよ」
「会長が人じゃない気がして私怖いです」
「バーカ。耳がいいんだよ。お前と作りが違う」
「あ、それでこそ人外!」
「おま…!!」
「───っ、あの!」

気まずそうに私に声をかけた男の子を見つめながら首を傾げる。やけにぱっつんが似合う男の子だなあと思いながらもジッと見ていたら、男の子は私から目線を逸らして俯いた。何でだ。

「君の名前は?」
「木ノ瀬梓、です」
「ん、木ノ瀬くんね」

よろしく!と笑いながら木ノ瀬くんの手を握れば、彼は私を見て少しだけ照れくさそうに笑った。遠目から見たときに強気な子に見えたんだけどそうでもないらしい。女の子のようで可愛いしね。

「先輩は、あの…」
「天月暦、三年天文科!」
「一年宇宙科です」

宇宙科なんだと思いながらも、木ノ瀬くんの頭をうりうりと撫でてから見慣れたふわふわした従兄弟を見つけ、木ノ瀬くんから離れた。会長、木ノ瀬くんは任せます!おい、待て!待ちません!

「伸ちゃん!来ちゃったー!」
「あ、先輩達…この人が暦ちゃんです!」
「うお、三年の女子生徒を間近で見るの初めてだぜ」
「俺も俺も!」

伸ちゃんの隣には何ともバカそうな男が二人居た。


改訂20130105