知らない場所は、画面越しに見つめ続けた世界。知らない人は、画面越しに見つめ続けたキャラクター。妙に洒落た制服は、画面越しに彼等が当たり前のように着ていた制服。私が住んでいた地域は冬だったのに、此処は春。
───始まりの季節だった。
◆
知らない人が私の部屋があるらしい寮の前に立つ。彼は私の肩をぐいぐいと押しながらも前に進んで行く。私の思考回路は大幅に停止。不意に見上げた空には、無数の星が散らばっていた。
「早く部屋に戻らなきゃ、門限過ぎるだろ」
「…ん」
彼は私が敬語を使うのは嫌らしい。いつもは白鳥って言いながら毒吐くくせに!なんて嘆く彼に私自身もお手上げで、よく分からないまま私は彼を白鳥と呼んでいる。
見たことのある顔だなと思いながらも私は辺りを見渡して冷静に状況判断をした結果、もしかすると、私は夢を見ているのかもしれない。
(夢にしては規模がでかいけれど)
───季節が違うとか、学校が違うとかそもそも白鳥って誰だろう、とか。
屋上庭園に居た時に言ってた神話科って何?犬飼、って誰の事?ぐるぐると回る私の思考に飲まれないようにそっと目を瞑る。白鳥はそれに気付かないまま、私にまた明日な、と告げて立ち去った。
立ち去る白鳥の背中でも見送ろうかと私は目を開いた。───すると、視界の端に数人の男女が映る。どうやら彼等は、三人で仲良く談笑をしてるみたいだ。私は彼らの姿に少しだけ違和感を抱きながらも、寮に入って行った。
どこが私の部屋だろうか、なんて思いながらも私は廊下を歩く。けどひとつの部屋の扉に『旭川』と表記されたプレートを見つけて私の足は勝手に立ち止まる。夢の中なのに部屋が用意されてるってなんともありがたいことだろう。私はドアノブを掴んで、ゆっくり回した。
…なんてシンプルな。私の部屋であろう場所は至ってシンプルで、音楽プレーヤーやベットに机、ミニテーブルに生活に最低減のものしか無かった。
(いや、でも、夢だし…)
夢なら何でもありなのかもしれない。私はベットに寝転がり瞳を閉じた。
Stare into the darkness
(闇の中で瞳をこらす)