見かけたのは、囲まれる私の友達。彼女の幼なじみである彼、七海くんは話通りに夜久さんに告白した先輩+変な連中に囲まれていた。

夜久さんは幼なじみのどちらかを呼びに行ったんだと思う。喧嘩は出来ないけど、懐柔(らしきもの)なら出来るんじゃない?とか思った私はベンチの影から飛び出した。

「七海くん!」
「は、おま…!?」

数人の先輩を蹴り上げながらも七海くんは、目を丸くしたまま私を見た。尻餅をついたまま私を見上げる先輩達に、にっこり笑っては携帯をちらつかせた。そうすれば、ほら。先輩達の顔は、さっと青くなった。

「これ、夜久さんを先輩方が囲んでる写真なんですけどね。ねえ、先輩。教師の方々、それに生徒会長にこれを見せたらどうなると思いますか?先輩なら…分かりますよね?」

断じて言っておくけれど、私の心臓はバクバクと音を立ててるのは明白だ。余裕のある話し方をしなければ、相手にはナメられる。犬飼と白鳥に何故か覚えさせられた話し方でもある。睨みつけてくる先輩達をジッと見下ろして額を伝う汗を無視した私はこの先の展開にドキドキと胸を鳴らした。

(……殴られるかな、)

殴られたら痛いんだろう。ほら、あの先輩運動出来そうだし、なんて変な解析をする私はとんでもなく馬鹿に思われるかもしれない。でも、現実逃避こそしたくなるものだろう。

「哉太っ!!」

夜久さんの幼なじみである東月錫也がお出まししたんだから。私は倒れる先輩達に近付いて、馬鹿じゃないですか、と笑いながらティッシュを数枚取り出し各自に渡した。───…だって、鼻血が、ね?それに先輩達の目がキラキラし始めて不思議でならないんだ。

「これ以上、あの幼なじみさん達に殴られたくなかったら…帰りましょう?私も教室行きたいし」

これは私自身に言ってるようなものだ。何となく前を見れば、この間つい声をかけてしまった土萌羊までいるんだから何となく気恥ずかしい。いや、相手はキャラクターじゃない。それは分かっている筈なのに、やっぱり戸惑ってしまう。

頷いた先輩達の背中をぱしっと叩いて、もう止めて下さいね、と言えば小さく謝られる。夜久さんと七海くん達はお互いが心配で、私達に目もくれない。こういう時が一番、夜久さんの存在感をひしひしと感じとれるのだ。

「あれ、旭川?」
「白鳥…」
「え、何でお前なんだよって顔すんの!?」
「何で分かったのさ」
「だから、顔…!」

廊下で会った白鳥に少しだけ安心しながらも、言葉を交えて、人が来たと思った瞬間に私は白鳥から逃げるように自身の教室に入り込んだのだった。

「旭川、遅刻っと…」
「すいません」

(遅刻扱いかよ…)

小さく、七海くんを殴ろうと私は誓った。




It is unfair that you cry

(君が泣くのは卑怯だ)


改訂/20130105